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やなせたかしさん死去 アンパンマンで描いた本当の正義とは

ニュースカテゴリ:社会の訃報

やなせたかしさん死去 アンパンマンで描いた本当の正義とは

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 13日に心不全のため、94歳で亡くなった、やなせたかしさんは漫画界の重鎮として、晩年まで豊かな活動を続けた。代表作「アンパンマン」は世代を超えた人気で、東日本大震災の際は被災者向けにメッセージとイラストを描いた。被災地ではテレビアニメの主題歌「アンパンマンのマーチ」も繰り返し放送され、多くの人に勇気を与えた。

 「本当の正義の味方は、戦うより先に、飢える子供にパンを分け与えて助ける人だろう、と。そんなヒーローをつくろうと思った」

 平成24年夏、「アンパンマン」の劇場版アニメの公開時、やなせさんはこう語っていた。弱い者に寄り添い、自らを犠牲にして子供を助ける。そのヒーロー像には、やなせさん自身の体験が反映されている。

 昭和16年に徴兵され、中国へ出征。戦地では食料がなく、タンポポなどの野草を食べたこともあった。人間にとって最もつらいのは「飢え」だと痛感した。

 「正義とは、ミサイルをぶっ放して相手をやっつけることなのか。俺はそうじゃないと思ったのね」。戦争では人間魚雷の特攻隊員だった弟も亡くした。正義とは何か。敗戦をきっかけに考え、その答えが「アンパンマン」のユニークなキャラクターに結実した。

 長い下積みを経て花開いた苦労人でもあった。28年に漫画家として独立。作詞した「手のひらを太陽に」(いずみたく作曲)が大ヒットしたが、本業の漫画では売れない時代が続いた。48年に絵本に初登場した「あんぱんまん」(当時はひらがな)は児童にとって内容が難しすぎると、当初は評論家に酷評された。

 しかし、幼稚園では幼児たちが奪い合って読み、次第に評判が高まった。テレビアニメ化され、大ヒットしたのは63年。やなせさんが69歳のときだった。

 平成21年には、「アンパンマン」が最もキャラクター数の多いアニメとしてギネス世界記録に認定。絵本「アンパンマン」はフレーベル館のシリーズだけで計6800万部販売された。

 12年から24年まで日本漫画家協会の理事長を務め、漫画界の発展に尽力。24年6月の第41回日本漫画家協会賞の贈賞式では歌を披露し、受賞者の表彰も行った。この際、「私の人生劇場も終幕。カーテンコールも終わりました。このへんで退場させていただきます」との文書を出席者に配布した。

 フレーベル館によると、やなせさんは8月下旬から肝臓がんのため、都内の病院に入院していたという。

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