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苦境に立つ有床診療所 博多火災で防災対策も経営圧迫

ニュースカテゴリ:社会の事件・不祥事

苦境に立つ有床診療所 博多火災で防災対策も経営圧迫

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 身近なかかりつけ医として地域医療を担う、入院患者の受け入れ可能な小規模の有床診療所が苦境に立たされている。経営難に陥りがちなことに加え、10人の犠牲者を出した10月の「安部整形外科」(福岡市博多区)の火災を受け、防火対策へのコスト増大も予想される。厚生労働省によると、統計を取り始めた平成2年に2万3589施設だった有床診療所は、昨年は約4割の9596施設に減少。関係者は「防火対策は必要だが、ますます経営悪化が進行するのではないか」と頭を悩ませている。

 「大病院が引き受けないような高齢者らの受け入れ先がなくなると思って続けてきたが、綱渡りで限界に達してしまった」。大阪府内のある診療所の男性職員が嘆いた。

 この診療所では以前はベッドを15床設けていたが、夜間当直の人件費などが経営を圧迫。毎月約200万円の赤字を出し、今年7月、入院患者の受け入れをとりやめた。

 「博多の火災は人ごとではない。経営に苦しむ多くの診療所が不十分な防火態勢のままなのではないか」。男性の診療所でも、設置に数百万~数千万円がかかるスプリンクラーを取り付ける余裕はなかった。煙をセンサーで感知する最新式の防火扉を導入することも困難で、手動式の防火扉は閉めたままにしている。

 有床診療所の経営難の背景には、診療報酬の問題がある。入院患者の診療報酬は大規模病院に比べて格段に低く設定されている。大病院の方が施設が充実しており、スタッフも多いため質の高い医療が提供できるという理由からだが、診療所の入院患者の診療報酬は、大病院の半分程度になることが多いという。

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が昨年度、全国の診療所を対象に行ったアンケートでは、29.5%が「赤字を抱えている」と回答した。

 江口成美主席研究員は「長期入院やケアの必要度の高い患者を抱える診療所ほど、厳しい経営を強いられている」と指摘。「博多の火災を受けてスプリンクラーの設置などが義務づけられれば、ますます苦しくなる診療所も出てくるのでは」と懸念している。

【用語解説】有床診療所

 医療法では、入院患者を受け入れる医療機関のうち、ベッド数が1~19床なら「有床診療所」、20床以上なら「病院」と規定されている。有床診療所には「医院」や「クリニック」などの名称が多く、厚労省によると約3割は内科で、外科や整形外科、産婦人科の割合も高い。規模が小さいため、同じ医師に診察してもらえるなどの利点がある。

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