■自律分散型の電力ネットワーク構築を
福島第1原発事故を契機として、太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの普及機運が高まっている。ただコスト高、出力安定性などの課題も抱える。技術開発は進むものの、どこまで普及できるのか。世界的な普及を目指して活動している再生可能エネルギー協議会の主要メンバーにシリーズで話を聞く。初回は同協議会代表の黒川浩助・東京工業大学特任教授。
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--2012年7月に太陽光や風力、地熱など再生エネ電力の固定価格買い取り制度が始まり、追い風だ
「国が設備認定することになったら、太陽光発電でたちまち2000万キロワットの候補が出てきたのは、日本にそれだけスペースがあるということ。ただネックとなっているのが(電力会社の送配電網である)系統の制限だ。日本全体で系統連携が最適化されていないから、電力会社は発電出力が不安定な太陽光や風力などの買い取り量を制限せざるを得ない」
--解決するには
「自律分散・階層構造の電力ネットワーク構築を提案している。太陽光、風力、小水力などの再生エネの連合軍と蓄電池などを駆使したコミュニティーを地域ごとに形成。地域間の需要変動は電力の自由取引市場で過不足を補う。これを地域、広域、全国と階層型で広げれば、南北間などの需要変動にも対応できる。雨が1カ月に3日間降る想定で太陽光と蓄電池だけのコミュニティーで試算しても、外から電力を買わなくて済むという結果が出ている。全国レベルの送電系統と電力市場により全国の需要変動に対応できる再生エネ社会ができる」
--周波数の違いから全国的な電力融通が難しい
「往復で各1000万キロワット程度の全国規模の融通網をつくる必要がある。それも現在の交流ではなく直流送電だ。直流なら送電ロスも少なく、電線のコストも安くなる。日本の直流送電は北海道・本州間の連係線が代表的だが中国では2000キロ以上の直流送電網ができ、さらに拡張する計画だ。米国や欧州でも採用している。直流だと直交変換装置などのコストがかかるが、既存の鉄塔を利用して敷設すればコストも抑えられる。導入コストはかかるが、季節の需要変動や震災などの災害時の国としてのセキュリティーと社会コストをミニマムにすることを考えたら、全国で連携するメリットは大きい」
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【用語解説】黒川浩助
くろかわ・こうすけ 早大第一理工卒。1965年通産省工業技術院(現産業技術総合研究所)入所。96年東京農工大教授(現名誉教授)、2008年から東工大特任教授。07年に再生可能エネルギー協議会を設立し代表。71歳。東京都出身。