ニュースカテゴリ:社会
訃報
小野田寛郎さん死去 「誇りと不撓不屈」戦い続けた日本人
更新
産経新聞のインタビューに答える小野田寛郎さん=2008年6月、東京・大手町(中井誠撮影) 小野田さんの戦いは終わった。91歳の生涯を貫いたのは「誇り」と「不撓不屈(ふとうふくつ)」だった。
40年前のあの衝撃は、いまも鮮明に記憶している。ルバング島での初めての会見は、私たち報道陣への敬礼で始まった。質問にはひとり一人と正対し、よどみなく答えていった。手製の軍服は繕われ、ボタンもしっかりついていた。
毅然(きぜん)とした立ち振る舞いは何なのか。謎が解けたのは、28年後。再会した小野田さんは「大切なことは“らしさ”です。“らしさ”とは自分の役割が何であるかを把握し、責任を持って遂行すること」と話した。孤独な戦いを続けながら「日本人の誇り」に通じる“らしさ”を磨き、表現したものだった。
帰還後、小野田さんはブラジルへ渡り、成田空港よりも広い牧場経営に成功した。なぜ、そこまで戦い続けるのか。
「自然が好きなんですよ。その気になればどこでも食っていけますから」
あの牧場は、小野田さんの意地の証ではないか。「自分は戦争屋じゃない」との思いもあっただろう。
あの日と同じように、背筋を伸ばし、謙虚でつつましく歩み続けてきた小野田さん。風化しない生粋の人間を、また一人、失ってしまった。(当時の取材キャップ・産経新聞元常務 山下幸秀)