■被災地を世界レベルの研究拠点に
産業技術総合研究所は4月、政府の「東日本大震災からの復興の基本方針」を受け、福島県郡山市に「福島再生可能エネルギー研究所」(理事長・中鉢良治氏)を開設。関連する産業集積などによる福島復興と技術開発の加速を目指す。同研究所を「世界レベルの拠点にする」という大和田野芳郎所長に研究テーマなどを聞いた。
--新しい研究所の陣容と施設の概要は
「産総研の研究員30人以上をはじめ、民間の研究者、文部科学省のプロジェクトメンバーも加わり、総勢100人規模となる。敷地面積は約5.5ヘクタールで、太陽光や風力発電の実証フィールドのほか、再生可能エネで電力の半分を賄う実験棟もある。大学や民間企業との共同研究などにより関連企業も集まるので、福島復興と同時に、研究開発でも世界レベルの拠点にしたい」
--具体的な研究テーマは
「当面は、(1)ネットワーク(2)水素キャリア(3)高効率風車(4)薄型シリコン太陽電池(5)地熱発電(6)地中熱-の6つだ。ネットワークは、再生可能エネの発電出力変動に対応し蓄電池や水素貯蔵などを活用、既存の電力系統に負担をかけないシステム技術を開発する。水素キャリアは太陽光などの電力を長期的に大量に液体水素の形で貯蔵し、電力需要の平準化を図る。世界でも珍しい常温常圧で水素を貯蔵・出力できる有機溶媒(キャリア)を開発する」
--実用化している風力や太陽光の次の技術は
「風車は大型化すれば効率が高くなる。現在は1基で7000キロワットまで計画されているが、1万キロワット程度に大型化する技術と、環境への影響を予測できるアセスメント技術なども改良する。太陽電池はシリコンの厚さを、現在の150~180マイクロ(1マイクロは100万分の1)メートルを半分以下にする技術を開発する。実現すれば、パネルの重さも半分になりコストも半分になる。地熱発電は温泉への影響がないよう1000メートル級の深さの掘削方法やモニタリング技術の開発だ。地中熱は東京スカイツリーでも活用されているが、数十メートルの深さの地中熱を冷暖房に活用するマップの作成などを行う」
--それぞれの技術開発の見通しは
「いずれのテーマも、コストを含め課題がみえてきたタイミングだけに、効率的な技術開発ができる」
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【プロフィル】大和田野芳郎
おおわだの・よしろう 東大大学院電気工学博士課程修了。1979年電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。研究コーディネーター、企画本部副本部長などを経て、2013年10月福島再生可能エネルギー研究所長。再生可能エネルギー協議会副代表も務める。62歳。福岡県出身。