SankeiBiz for mobile

マレーシア機不明、関係各国“非難ゲーム” 犯罪組織の「ハブ」になったタイ

ニュースカテゴリ:社会の話題

マレーシア機不明、関係各国“非難ゲーム” 犯罪組織の「ハブ」になったタイ

更新

【アジアの目】

 マレーシア航空機が行方不明になっている事件(事故)をめぐり、関係各国の間で責任のなすり合いが激しさを増している。中国はマレーシア政府への非難を強めるが、その一方、偽のパスポートや航空券の発券がタイ国内で行われていたことから、テロや犯罪組織がタイを“利用”している実態が指摘されている。

 今回の事件は、原因がいまだ不明で、関係国も多いことから、責任の所在を明確にするのは容易ではない。にもかかわらず、中国当局は事件後早々にマレーシア政府の事故後の対応が遅いなどと批判。

 さらに故障ならマレーシア航空の責任が大きいと指摘した。盗まれたパスポートを使って2人が同機に乗っていたことが明らかになると、「テロなら搭乗を認めたクアラルンプール空港の責任だ」などと、非難をエスカレートした。

 こうしたなか、マレーシアのマハティール元首相は10日、クアラルンプール郊外のプトラジャヤのホテルに待機する搭乗者の家族らを訪問。その後、記者団に「非難ゲームは事態の解決には結びつかない。関係当局が航空機の捜索に全力を挙げていると信じている」などと述べ、中国を名指ししなかったが、関係国に冷静な対応を呼びかけた。

 盗難パスポート利用

 今回の行方不明という事態がテロによるものかは不明だが、不正に使われた2通のパスポートはもともと、2013年にいずれもタイのリゾート地パタヤで盗まれた。名義はオーストリア人男性とイタリア人男性で、一人はパタヤで、もう一人はパタヤからバンコク行きの飛行機の中で盗まれたという。

 タイ紙バンコク・ポストによると、タイでは年間1000通のパスポートの紛失・盗難届が出されている。置き忘れやすりによる盗難などが理由で、国籍はロシア、英国、フランス、中国、韓国、米国、日本、ドイツ、オーストリア、カナダが多い。

 紛失や盗まれたパスポートの番号と名前は、国際刑事警察機構(ICPO)のデータベースに記録される。しかし、今回のパスポートについてタイから同データベースへの内容照会などはなかったという。

 盗難パスポートの所持者が使った航空券もパタヤで売られた。以前、パタヤに仕事で来たというイラン人のアリという男性が、パタヤの旅行会社で購入した。アリ氏は初めてパタヤに来たときも、友人のためとして何回も同社から航空券を購入していたため、旅行会社側も安心して手配していたようだ。

 もっとも、AFP通信によると、タイは「国際犯罪組織が偽造パスポートや偽の財務諸表を手に入れるハブ(中心)の一つ」(タイ情報筋)であるばかりか、「国際テロ組織がテロ計画を練ったり、資金集めを行ったりしたことがある」(テロ対策専門家)という。

 保安態勢に問題

 10年に、国際テロ組織アルカーイダにつながる組織のために偽造パスポートを作ったとしてパキスタン人男性2人とタイ人女性2人がタイで逮捕された。彼らは08年のインド・ムンバイのテロや04年のスペイン・マドリードでの列車爆破事件にも関わっていたとされる。

 今回の事件も当初、盗難パスポートを使った2人はアジア系の顔とされていたが、マレーシア当局は11日、2人は欧州への不法入国を狙ったイラン人と発表した。しかし、パスポートの名義と本人が異なる搭乗客は、他にも2人いたとの情報もある。

 そもそも東南アジアでは、入国時はパスポートのIC部分に記録された写真と見比べるなど厳しいが、出国の際はそこまでしない。

 さらに地方空港などでは、入管職員に言われるまま、手数料に10ドル(約1030円)ほど上乗せしたところ手続きが簡素化されたこともある。彼らは汚職ではなく「役職に伴う正当な報酬」という感覚が大きい。

 今回の事件の原因究明を待つまでもなく、役人の意識改革を含む保安態勢の抜本的見直しこそが喫緊の課題だろう。(編集委員 宮野弘之)

ランキング