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【生かせ!知財ビジネス】営業秘密流出 現場は冷静、過剰反応を警戒
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移送される杉田吉隆容疑者(左)=13日夜、東京・羽田空港 東芝の営業秘密が元サンディスク社員経由で韓国SKハイニックスへ渡ったとされる不正競争事件は、法改正などで日本の知財業界に波紋を広げているかと思いきや、現場レベルは意外に冷静である。大手企業なら法務、知財両面で対策済み。共同研究や転職による営業秘密や企業情報の不正な出し入れをさせない条項もある。
一方、日本企業の知財部門で顧問を務める専門家は過剰反応を警戒する。「問題は、厳正化のあまり連携先の法令順守や情報管理のレベル、社員の資質まで照会した上で契約しなければ株主に説明できない風潮が生まれること。オープンイノベーションに目が行き始めた日本企業の外部との開発連携が減る可能性もある」と話す。
法務、知財両面だけでなく、大手企業では転職者の追跡調査も既に実施しているという。「万が一のため、先進的な企業では合法的に、特許や論文のデータを使って転職者が転職先の研究や事業に与えた影響度や出身企業の情報をどのレベルまで開示したかを分析している」と情報解析会社の経営者は説明する。むしろ「ノウハウの集積で活動している中小企業の営業秘密対策こそ強化すべきだ。労働者不足や海外進出に落とし穴がある」(大手企業の知財担当者)と注意を促す。
また、元上場企業の幹部は問題の本質は日本の技術者の未熟な自立意識にあると指摘する。「事業部門の入れ替えで人材の流動化が起きるが、帰属する企業名にこだわるより自分の能力と職業選択の自由を生かしてほしいと思っても理解されない。それは企業の問題よりも文化の問題だ」と言う。時間をかけて技術者としての自立意識を高めれば、不正な転職は減るとみている。
日本企業の実行力を批判する声もある。「いくら契約を万全にして調査をしても、不正を公表した上でたださなければ意味がない」と指摘するのは大手法律事務所の米国弁護士だ。「文化の問題を言うなら、戦う姿勢を見せないのが日本企業の特徴だ。今回の東芝の行動こそ海外では評価を高め、不正への牽制(けんせい)効果を与えた」とみる。確かに大手企業の知財担当者も「訴えを起こせるネタはたくさん持っている」と明かす。半面、「これから営業秘密問題の訴訟が活発化するかは分からない」との見方も示す。多くの企業はあくまで「やるべきことはやっている」という姿勢なのだ。(知財情報&戦略システム 中岡浩)