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ビーチでの「飲酒・運転事故」絶えず… 法的規制が必要?

ニュースカテゴリ:社会の話題

ビーチでの「飲酒・運転事故」絶えず… 法的規制が必要?

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女性4人が死傷するひき逃げ事件があった市道(中央)。奥は海水浴場「おたるドリームビーチ」=14日午前、北海道小樽市  北海道小樽市で今月13日、ビーチ帰りの女性4人が酒を飲んでいた男にひき逃げされ、3人が死亡、1人が重傷を負った。男は「事件直前まで海岸で約12時間、飲酒していた」と供述しているという。事件後、北海道警は飲酒運転の取り締まりを強化した。しかし、事件の背景には飲酒に対する日本人の意識があるのではないだろうか。(村島有紀)

 海の家で飲酒

 事件が起きた小樽市の市道近くのビーチ「おたるドリームビーチ」は約1キロの海岸で、近郊の家族連れや若者が集まる。最寄りのJR函館線星置駅からは徒歩で約40分。日時によっては無料送迎バスがある。駐車場は普通乗用車が1日800円。関係者によると、7対3の割合で車での海水浴客が多いという。

 北海道警などによると、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで逮捕した札幌市の飲食店従業員、海津雅英容疑者(31)は知人が経営する海の家から手伝いを頼まれた。この間、約12時間にわたり飲酒を続け、車でたばこを買いに行く途中で4人をはねた。「事故さえ起こさなければ大丈夫と思って運転した」という。

 海の家の経営者らでつくる、おたるドリームビーチ協同組合の田頭晃副理事長(59)は「決して野放図にしていたわけでも、飲酒運転を黙認していたわけでもない。海の家の者は『寝てしまい、(運転を)知らなかった』と言っている」と話す。

 事件を受け、北海道警は道内全域で、ビーチ出入り口付近での検問を強化。事件後、海水浴客が半減したおたるドリームビーチでは献花台を設置して被害者の冥福を祈るとともに、23日には同組合事務所に約30人が集まり、「飲酒運転撲滅宣言」を行った。

 同組合が考えた撲滅のための対策は、酒類提供の際に「車で来ていますか」と声を掛ける▽ノンアルコール飲料のPR▽代行運転のポスター▽駐車場に「飲酒運転禁止」ののぼり90本の設置▽来年度からJRの駅との間の無料送迎バスを増便する-など。田頭副理事長は「飲酒運転をなくすため、できる限りのことはしたい。しかし、無料バスの運行も、のぼりの設置も費用がかかる。声掛けをしても百パーセントフォローできず、外から持ち込んだ酒で飲み続ける人もいる。最終的には本人のモラルの問題」と、対策の難しさをにじませる。

 禁止の所も

 神奈川県逗子市は今年3月、「安全で快適な逗子海水浴場の確保に関する条例」を改正し、逗子海水浴場では海の家以外での飲酒と音楽を禁止した。条例施行後、海水浴客は若者を中心に半減。波の音が聞こえる海水浴場に戻り、けんかやごみ捨て、泥酔などはなくなった。逗子海岸営業協同組合の原敦・代表理事(44)は「水分補給代わりに酒を飲む人がいて、熱中症の危険もあった。海の家だけなら節度を持って飲んでもらえる」。

 各国のビーチ事情に詳しい、生活総合情報サイト「All About」の旅行ガイド、古屋江美子さん(37)は「花見をはじめ、花火大会やお祭りなど日本は飲酒には寛容で、泥酔してもあまり冷たい目では見られない。しかし、米国や豪州の多くは州法で公共ビーチでの飲酒が禁止されている。飲酒運転や泥酔を防ぐため、何らかの抑止力となりえるルールが設けられてもいい」と話している。

 ■飲酒の水事故 死亡率は62%

 ビーチでの飲酒は水の事故も誘発する。海上保安庁の調べでは、昨年に飲酒して遊泳中に溺れ、救助を求めた人は45人で、うち28人が死亡・行方不明となった。死亡率は62%に上り、救助を求めた人全体の死亡率37%(284人中106人死亡・行方不明)と比べ、著しく高い。担当者は「飲酒による判断能力や運動能力の低下が一因」と話している。

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