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増え続ける「宇宙ゴミ」対策 自分ごと燃え尽きる“パックマン計画”など登場

ニュースカテゴリ:社会の科学技術

増え続ける「宇宙ゴミ」対策 自分ごと燃え尽きる“パックマン計画”など登場

配信元:@DIME

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【TREND WATCHING】

 7月7日の七夕から運用が始まった最新型の気象衛星「ひまわり8号」から送られてくる地球を捉えた高解像度のカラー画像には驚かされるばかりだ--。打ち上げが続く各種の人工衛星や国際宇宙ステーション(ISS)の拡充と、着実に進む宇宙開発だが、増え続ける“宇宙ゴミ”の問題などいくつか早急に解決せねばならない課題もある。しかしこれらの問題の解決の糸口もいくつか見えているようだ。

 ■最新鋭の“宇宙ゴミ”把握・追跡レーダー「GESTRA」

 故障や寿命で機能を停止した人工衛星の数々もまた現役時代と同じように地球の衛星軌道上を回っている。徐々に分解してバラバラになっていけばまさに“宇宙ゴミ”という形容が相応しいが、最悪のケースは人工衛星同士が衝突する事例で、過去に何度か実際に起こっている。果てしなく広い宇宙だが、地球の衛星軌道上はどんどん混雑しはじめているのだ。

 ある試算では現在衛星軌道上には直径10センチ以上の人工衛星の部品などの宇宙ゴミが2万個あまり浮遊しているといわれている。もちろん、ただフワフワと浮いているわけではなく時速2万5000キロもの速度で衛星軌道をグルグル回っているのだ。現役の人工衛星や宇宙ステーションにとってはこれは脅威以外の何ものでもない。

 この宇宙ゴミ問題の対策に動いたのがドイツ政府だ。ドイツ航空宇宙センター(DLR)は約33億円(2500万ユーロ)を投じて衛星軌道上の宇宙ゴミを捕捉・追跡するシステムの開発に着手したことを先頃発表した。「GESTRA(German Experimental Space Surveillance and Tracking Radar)」と呼ばれるこの新たなレーダーシステムの開発はドイツの研究機関、フラウンホーファー研究所の高周波物理学とレーダー技術部門(FHR)が行なう。

 ドイツ「フラウンホーファー研究所」のサイトより。

 現状でもNASA(米航空宇宙局)は10センチ四方より大きい宇宙ゴミを監視しており、ドイツでも宇宙ゴミを観測するレーダーシステム「TIRA(Tracking and Imaging Radar Systems) 」が稼働しているが、新たに開発されるGESTRAは現システムに比べて飛躍的に捕捉・追跡性能が向上しているということだ。

 特に多数の宇宙ゴミを同時に把握し航路を予測する性能に優れており、宇宙ゴミ衝突の可能性が高い人工衛星に事前に“警報”を発する役目を担うことを目指し、2018年の完成を予定している。レーダーシステムの完成後は衛星軌道の心強い“監視員”になることは間違いない。

 ■物理的に宇宙ゴミを掃除する“パックマン方式”

 このGESTRAのプロジェクトと同時期にスイスで発表された宇宙ゴミ対策はなんと“パックマン計画”である。今や懐かしいレトロなビデオゲーム『パックマン』のように、衛星軌道上で食欲旺盛に宇宙ゴミをパクっと“食べて”回収し、その後は大気圏に再突入して、自分もろとも燃え尽きるという宇宙の“お掃除係”だ。

 この“パックマン計画”は、先頃、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)を中心とした開発チームが発表した、虫取り網のようなネットでEPFLの小型人工衛星を捕獲して処理する計画「The CleanSpace One project」だ。

 宇宙ゴミとなった小型人工衛星を捕獲する。

 ◎動画はコチラ

 現在スイスが運用している人工衛星は「スイスキューブ」という直径10センチほどの立方体の小型人工衛星である。このキューブ型人工衛星は開発期間が短く、打ち上げも他の大型人工衛星に“相乗り”して行なえることから低コストで運用できるのだが、そのぶん寿命も短いため比較的早く宇宙ゴミ化してしまう。そこでスイスは役目を終えたスイスキューブを回収処分する今回の計画を立ち上げたのだ。

 そして小型の宇宙船がパックマンのように大きく口(金網)を拡げ、スイスキューブを丸ごと頬張って回収するという“パックマン”方式を考案したのだ。すでに試作品はほぼ完成しており、この史上初(宇宙初!?)となる“宇宙清掃員”を2018年に打ち上げるべく着実に開発が進められている。物理的に宇宙ゴミを減らす道が拓けてきたことは大きな希望である。

 ■もし宇宙空間に投げ出されたら……

 昨年公開された宇宙SF映画『ゼロ・グラビティ(Gravity)』では、宇宙飛行士が宇宙空間に投げ出されるシーンが臨場感たっぷりで描かれていて、束の間の宇宙遊泳体験を味わうこともできた。映画の中では事故で粉砕したスペースシャトルの残骸などが迫り来るシーンもあり、まさに宇宙ゴミの恐ろしさが身に染みてくる場面も多い。

 また昨年は火星移住計画「Mars One」で人類最初の火星移住メンバーが募集されるという驚きのニュースもあり、何かと宇宙が身近に感じられてくることが多かった気がするが、ビデオゲームの世界からは宇宙空間をバーチャルに体験できる一人称体験(First Person Experience)ゲーム『ADR1FT』が開発中だ。

 この『ADR1FT』のトレーラー動画では、宇宙服のヘルメット越しに宇宙空間が広がり、事故で粉砕した宇宙船の残骸が次々とこちらへ向かってくる模様が一人称の視点から描かれている。必死に手でそれらの宇宙ゴミを払い除けるも大きなガレキに衝突し宇宙服に異常が発生してしまい絶体絶命! このまま漂流し続けていれば酸素が尽きて死を待つのみであることは一目瞭然である。動画はここで終わっているが、この後どのようにしてサバイバルしていくことになるのか、確かに気になる……。

 もしも宇宙空間に投げ出されたら…(『ADR1FT』トレーラーより)

 ◎動画はコチラ

 米・カリフォルニア・サンタモニカのデペロッパー「Three One Zero」が制作し、販売を「505 Games」が行なうこの『ADR1FT』は今年9月にXbox One版、PS4版、PC版がぞれぞれ発売される予定だ。来年にはバーチャルゲームが楽しめるVRヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」版のリリースも予定されているということだ。

 この『ADR1FT』のゲーム体験を通じて近い将来に直面する事態になるかもしれない宇宙空間でのサバイバルを“予行演習”してみてもいいかもしれない。

 ■重力を発生させる画期的エアロバイク

 宇宙ゴミのほかにも宇宙にまつわる急務の課題がある。それは宇宙滞在中の体力、特に筋力の急激な低下である。現状では無重力(微重力)の宇宙ステーション内の生活が長引くほどに、筋力と骨密度の低下リスクに直面せざる得ない。

 一説によれば宇宙空間では、筋力が地上の寝たきり状態の2倍以上の早さで低下し、骨量が骨粗しょう症患者の10倍の早さで減少するともいわれている。したがって宇宙ステーション内にはまるでジムと見紛うばかりに運動器具が用意されており、宇宙飛行士たちは暇さえあれば運動に励んでいるのだ。しかしそれでも出発前の筋力を維持するのは極めて難しいという。

 約5ヵ月半(167日)もの間、国際宇宙ステーションに滞在した日本人宇宙飛行士・古川聡さんは毎日2時間半のマシン運動を欠かさなかったというが、それでもミッション終了後は骨密度が低下しており、筋力は平均10~20%も減少していたということだ。

 もし将来、一般の人間が火星に行くことになるとすれば、3年にも及ぶという長い宇宙旅行の間に身体が弱りきってしまうのは火を見るより明らかである。

 しかし先頃、米・マサチューセッツ工科大学(MIT)でこれまでにない画期的な宇宙ステーション用のトレーニングマシンが開発されたのだ。ジムにあるエアロバイクのようなマシンに腰をかけてペダルを漕ぐと、無重力の空間をまるで360度回転のジェットコースターのように内側からグルリと回転する構造になっている。ペダルを漕ぎ続けて回転を続けていけば、遠心力で重力が発生し、地球と同じ1Gからさらに強い1.4Gほどの重力を受けながらバイク運動ができるのだ。

 「Gizmag」の記事より

 これまでは、宇宙空間でどれほど運動しても循環器系の機能回復は難しかったが、このマシンを使った運動を適切に行なうことによって一定時間“地球環境”に戻ることができるため、筋力や骨密度の低下の抑止はもちろん、血圧などの循環器系の機能低下も抑えることができるという。

 「Gizmag」の記事より。

 まるでカゴの中で回し車(ハムスターホイール)に興じるネズミみたいだが(!?)、自ら回転して重力を発生させることで無重力状態からいったん逃れて体調を管理することが可能になれば、宇宙ステーションでの長期滞在や長い宇宙旅行の実現がグッと近づいてきたことになるのではないだろうか。こうしていろいろ考えてみると、人類の宇宙進出はやはり思っていたよりも早く実現しそうな気がしてならない。

 文/仲田しんじ

 フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji

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