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【電力考】CO2削減目標達成阻む原発40年規制
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主要国首脳会議を終え、記者会見する安倍首相=6月8日、ドイツ・ミュンヘン(共同) 安倍首相は「戦争を未然に防ぐため」の法案であるという理解の浸透を図り、平和安全法案の今国会成立を目指している。内閣不支持率が上昇してもなお成立を目指す背景には、4月米議会演説で首相自身が「(自衛隊海外活動を広げる)法案の成立をこの夏までに必ず実現する」と述べたことが国際公約化している事実がある。
◆国際公約実現へ
その国際公約が意外と軽視されているのが二酸化炭素(CO2)削減目標だ。
今年は、パリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、米、中など主要国も参加する「2020年以降についての新枠組み」の合意を目指す「地球環境の年」だ。
安倍首相は6月初め、ドイツで開かれた主要国首脳会議(サミット、G7)で、原子力割合を20~22%とするエネルギーミックスを説明し、30年度排出削減目標を「13年度比26%減」とすると述べた。同サミットは地球温暖化対策が主なテーマの一つだっただけに、それが国際公約になったことに議論の余地はないだろう。
しかし、その実現性がにわかに怪しくなっている。
非科学的な原発40年運転規制の厳格適用を求め、40年超の原発をすべて廃炉に追い込もうという原子力規制委員会の姿勢がほぼ明確になったことで、原子力の電源構成比を20~22%と、それを基礎とする排出削減目標26%減が非現実的になってきたからだ。
7月1日に田中俊一規制委員長は、運転開始後60年までの期間延長を申請している関電美浜原発3号機について今月末までに地震想定が大筋で固まらなければ、認可ができなくなるという可能性を示唆した。
運転開始から38年経過の同原発が、運転延長をするには来年11月末までに新規制基準に基づく審査に加え、老朽化対策に特化した別の審査にも合格する必要がある。
30年末までに運転開始後40年超となる原発は同原発を含め20基にのぼるが、すべて同手続きを踏まないと運転延長ができない。しかも、1基ごとに運転40年を迎える1年3カ月前でないと延長の申請は受理されず、余裕を持っての申請は受け付けてもらえない。
さらに、田中規制委員長は当初「審査に半年程度」と語っていたが、新規制基準が運用されて約2年がたつのに、再稼働に必要な審査・検査を終えたのは7月24日に終了した川内原発1号機の1基だけだ。
この調子では、前述の原発20基は運転延長の申請をしても40年の期限をそのまま迎え、全て廃炉という運命になる。これでは他の全原発が再稼動したとしても原子力割合は、30年断面で15%止まりとなり、政府が目指す原子力割合20~22%には到底達しない。発電段階でCO2を発生しない原発の電気の量が減ればCO2の削減量も減るわけで、排出削減目標26%も絵に描いた餅になってしまう。
◆科学的で合理的な議論を
この問題を放置していては、安倍首相は地球温暖化対策の国際公約をほごにしたと言われても仕方あるまい。
40年運転規制などは原子力規制委員会のルールであり、同委員会を改革することが急務である。設置法附則第5条に「3年以内の見直し」が規定されていて9月にその節目を迎えるが、多くの機関は腫れ物に触るようで動きがはかばかしくない。
唯一、自民党の電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)だけが、緊急提言を取りまとめ、7月8日に発信した。同提言は内外の専門家の意見を集大成した上で、国会議員の多様な意見も反映したものだ。40年運転規制については「一律40年と運転期間を制限するのではなく、科学的、合理的な議論に基づいて有効活用を図ることが必要」と述べ、外部監査を拒み孤立を続ける規制委員会に第三者の声の反映を求めるなど、網羅的で、的確かつ妥当な内容となっている。
安倍首相は、国際公約を実現するために、この党内143人の国会議員による緊急提言の内容を生かし、実現する方向で国のリーダーシップを発揮していただきたい。(芝一太郎)