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「育休3年」推進へ課題多く 在宅、短時間勤務との組み合わせカギ
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ただ長いばかりでいいのか。育児休業制度の長期化には課題も多い 仕事と育児の両立を目指し、安倍晋三首相が呼びかけた「育児休業3年」。企業によってはすでに制度化しているところもあるが、長期のブランクによる不安から満期の取得率は低い。積極的な企業は休業制度だけでなく、復職後の柔軟な働き方の推進やスムーズな復帰支援に動いている。3年育休が目指す育児と仕事の両立は、休業制度単独ではなく、多様な働き方との組み合わせがカギとなる。
長期の休業による仕事のブランクは、復帰の際に不安材料になりがちだ。そこを逆手にとったのは、ローソンが4月に設置した育休明けの女性社員を集めた専門部署だ。休業中に養われた「子育てママ」目線を生かして商品開発に還元させる狙いがある。
ローソンは育休3年を1992年から制度化しているが「満期取得者は1割未満」(広報担当者)といい、むしろ休業取得後にスムーズに仕事に戻れる環境づくりに力を入れている。小学校3年生以下であれば週2日までの在宅勤務も可能にした。
キリンビールも92年に育児休業3年を制度化したが、2006年には期間を2年に短縮した。社内調査によると、育児休業取得者の9割が1年半までに復帰しており「3年も休むと会社も社会も環境が変わってしまい不安」との声が多かったからだ。そのかわり短時間勤務の種類を増やし、子供が小学校3年生まで使えるよう、復帰後のサポートを強化した。広報担当者は「支援体制が必要なのは3歳までとはかぎらない」と話す。
働き方の多様化は女性に限らない。日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)は昨年1月から、全社員対象に、月ごとに就業時間を自分で設定できるフレックスタイム制度を運用している。
仕事の状況に応じて出退社時刻を調整することができ、週1回の在宅勤務も認める。育児だけでなく介護や勉強、リフレッシュなどの目的でも利用されているという。同社は「全社員が働きやすくなることで結果的に、仕事と育児の両立も可能になる」と説明する。
ソニーも08年から、育児や介護を理由とする在宅勤務を認めているほか、休業中や復帰前後の社員を対象に情報交換の場となるフォーラムを開くなど、横のつながりを不安解消に役立てる態勢を整えてきた。
ワークライフバランスに詳しい東レ経営研究所の渥美由喜研究部長は「長期休業によるブランクは、キャリア形成上の障害になる懸念が企業にも女性にもある」と指摘。
「休業中の在宅勤務を認め、既存の休業給付金に賃金を上乗せして所得保障をするなど、(家計を支える)男性も取得しやすい環境づくりも必要」と話す。
育休中の在宅勤務を認める育児休業給付の支給要件緩和を、政府が検討する動きも出ている。経済界に投げられた「育休3年推進」に併せた、政策の後押しも不可欠だ。(滝川麻衣子)
ローソン ▼育休明けの女性社員を集め、商品開発に生かす専門部署を設置
▼育児休職者へのノートパソコン貸与による自宅での学習や社内との情報交換
キリンビール ▼育休は3年から最大2年に短縮
▼時短勤務は48カ月を上限に小学3年生まで5、6、7時間から選択
P&G ▼全社員対象に月ごとに就業時間を自分で設定できるフレックスタイム制度
▼週1回の在宅勤務を認める
ソニー ▼週1~2日の在宅勤務を認める
▼休業中や復帰前後の社員向けに情報交換の場を提供