ニュースカテゴリ:暮らし
仕事・キャリア
ぼくが「ほぼ日刊イトイ新聞」に感心する理由
更新
「ほぼ日手帳」英語版 『ほぼ日手帳/ほぼ日刊イトイ新聞』のフェイスブックページがある。現在3万1千人以上が「いいね!」をクリックしているが、ユーザーの住む地域の1位は東京だ。しかし2位が驚きだ。開設後9か月間は台北市で3位の大阪を大きく引き離している。
『ほぼ日刊イトイ新聞』(略称「ほぼ日」)はコピーライターの糸井重里さんが主宰するオンラインサイトで、コラムなどのコンテンツととともにTシャツや腹巻等の雑貨を販売している。月間平均訪問者数は約117万人あるという。そこで10年以上続いている『ほぼ日手帳』は昨年、提携店のロフトを含み48万部の販売を記録した。
その手帳の熱心なファンが台湾にいる。そういうことも励みに最近、一昨年からスタートした『ほぼ日手帳』英語版の販売に力を入れ始めた。まだ海外市場で「飛ぶように」売れているわけではない。だが、「海外市場に出たいけどなかなか決断ができなくて…」と愚痴る経営者が多いなかで、『ほぼ日手帳』の海外進出ロジックは明快だ。
「私たちが面白いと思うことをボーダレスに共感してくれる人をみつけていく」
同社で本プロジェクトを推進する篠田真貴子さんと冨田裕乃さんの2人の言葉だ。「私たちは素人の集団みたいなところがあって」とおっしゃるが、それは謙遜ではなくビジネスポリシーだ。
ユーザーの顔をじっくりと見つめることを何よりも優先する彼らにとって、パートナーとは最終消費者である。それにしたがい、「海外市場に出るには信頼のできるパートナーとの出会いが全て」と耳にタコができるほど巷で聞くセリフが『ほぼ日手帳』ではニュアンスが変わる。
「信頼できるパートナー」がどんな場合でも大切であることには変わりない。が、聞き飽きた言葉の向こうには、「信頼できる輸入代理店」の顔が強く浮かぶ。どんなに有能な人格者が代理店の社長であっても、法人としての信用がポイントとしてどうしても先立つ。これが判断の勘を往々にして狂わす。そう「ほぼ日」の人たちは考えている。
篠田さんは「もしかしたら、小さい規模で始める商売のお客さんの中から代理店になりたいという人が出てくるかもしれない。それが理想です。逆のプロセスは考えにくいです」と語る。
しかも「同じような価値の人たちにアプローチするといってもオタク文化のつながりとは違う気がします。仲間内で閉じているものではなく、興味があるひとにはオープンでいたいのです。たとえばほぼ日手帳で言うと、手で書くということに喜びを感じるひとに出会えたらうれしいと思います」と冨田さん。
これを強みとぼくが考える理由を挙げよう。
ローカリゼーションマップが強調するポイントの一つは、異文化市場に対する確信の持ち方だ。ローカライズされた限られた数のモノを通じ、「この市場はこんな感じではないか」という勘を確信に変えるアプローチを説いているが、実はこれは日本人により効果的だ。
例えばイタリア人に話す時には別の点にフォーカスする。
なぜならイタリア人はほっぽっておいても容易に確信して突っ走ろうとするから、あえて「確信のしかた」を説く必要がない。この違いを個人主義が強いからとも説明できるが、ぼくが一番感じるのは、自分の言葉をもっているかどうかだ。
イタリア人の方が自分の言葉をもっているケースが多い。一方、日本のビジネスパーソンは自分自身の言葉を隠すことを暗に要請されてきたためか、どこか他人の言葉を借りて考える癖がついている。
ぼくが『ほぼ日刊イトイ新聞』で感心するのは、糸井さんがさまざまな分野のさまざまな専門家と対談しながら、糸井さんのセリフが変に難しく引っ張られないことだ。この文化が「ほぼ日」という会社に染みついている。それがフツーの日本企業と明らかに対照的な点だ。
ただし、「対照的」を「差別化」ととるとミスリードする。差別化とは、その根のところで対抗馬と同じ言語で考える羽目に陥っており、「ほぼ日」はそもそも比較するという発想を避けている。
自分の言葉をもつ。これがしっかりと足元を固めるにいかに必要なことか、多くのビジネスパーソンが案外見逃している点かもしれない。
ローカリゼーションマップの勉強会を11月30日に行います。タイトルは「安藤昌也さんのUX論 利他的な『私』」です。参加ご希望の方は以下をご覧のうえお申込みください。→ http://milano.metrocs.jp/archives/5957