ニュースカテゴリ:暮らし
健康
栄養学学ぶ大学生がレシピ開発 地域の健康な「食」に貢献
更新
食を通じて健康づくりに役立とう-。栄養学を学ぶ大学生が健康に良いメニューを飲食店などに提供する活動が広がっている。神奈川県立保健福祉大(横須賀市)では管理栄養士の卵たちが県や市の食堂向けに、栄養のバランスを考えたレシピを開発。地域のニーズを踏まえた教育研究が大学に求められる中、提供先を地元企業に拡大している。(寺田理恵)
神奈川県庁(横浜市中区)の食堂では毎週水曜日の昼食時、同大の栄養学科生を中心とする食育サークル「シーラボ☆」が考案したメニューが出る。10月のメニューの一つは、サツマイモご飯と鮭ムニエルにホウレンソウのクルミみそあえも付いた定食(550円)。注文した県職員の牧下弘一さん(39)は「健康メニューにしては味がしっかり付いている」と意外そうだ。
主菜に添えた野菜やキノコ汁も合わせたエネルギーは632キロカロリー。塩分は控えめだが、代わりに香辛料やスダチの香りをきかせた。
開発にかかわった同大3年の大宝奏美(おおたからかなみ)さんは「主食、主菜、副菜の構成が食事の基本だと知ってもらい、野菜不足に気づいて積極的に食べるといった行動につなげてほしい」と意気込む。
メニューは試作を繰り返すなど約2カ月かけて開発し、食堂入り口にはレシピが展示される。ただ、働き盛りの男性職員が多いためか、ラーメンや、よりボリュームのある定食の人気が高い。どのようにして健康メニューに関心を持ってもらうかが課題だ。
同大は平成15年、地域社会への貢献を理念の一つとして開校。19年に結成されたシーラボは大学の地域貢献の一環として地元企業の食堂にもメニューを提供したほか、スーパーなど200店以上で店頭配布されるメニューカードの内容も年4回提案している。その活動が評価され、昨年、内閣府食育推進ボランティア表彰を受けた。
店が栄養学の観点から商品をアピールできる一方、管理栄養士を目指す学生にとっては「勉強になる」(シーラボ代表の3年、瀬下美紗さん)。総菜や弁当をスーパーと共同開発し、店頭PRも行った。3年の加藤勝大さんは「原価も考えるなど、マネジメントが身に付く」と話す。
自治体と大学との連携では、埼玉県坂戸市と同市内の女子栄養大が、認知症や脳血栓などの予防に効果があるとされるビタミンの葉酸を含んだサンドイッチや菓子などのレシピを開発し、地元のパン店など5店に提供している。
同市は同大の研究を基に、葉酸摂取を市民に勧めるプロジェクトを18年度から展開。葉酸を多く取れるメニューや食品を提供する店を応援店に認定しており、同大がレシピを提供した店を含め、50店に広がった。
同市によると、市民対象のアンケートで、葉酸を「知っている」「聞いたことがある」と答えた人は20年度の76%から今年度は85%に増え、認知度が高まったという。大学と地域の店や自治体などとの連携は、健康を意識した食生活につながるのか注目される。
大学にとって、地域貢献活動は重要課題となっている。学生が学内の食堂用にメニューを開発するといった健康分野のほか、地域の活性化や観光、環境、人材育成など幅広い分野で、大学と自治体や企業との連携が進んでいる。
背景には、平成18年の教育基本法改正や19年の学校教育法改正に伴い、地域貢献を含めた社会貢献が大学の新たな役割として位置付けられたことがある。大学改革が進む中、文部科学省も補助金で後押し。14、15年度に国立大を対象としていた支援事業を今年度は私立大にも広げた。