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自然免疫力アップでからだ治癒力高めよう
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健康志向を背景として病気にならない免疫力の高い体を作ることに注目されているが、インフルエンザに感染しないためにも免疫力アップは大切だ。免疫とは、体内のリンパ球が異物(自分ではないもの)を排除する反応のことだ。本来、免疫の目的は病気を防いだり治したりすることではなく、異物を排除することであり、病気が治ることはその働きの結果にすぎない。
免疫には獲得免疫と自然免疫とがあり、前者はワクチンによって獲得することができるのに対し、後者は適度な運動や十分な睡眠、休息、食習慣といった生活習慣の改善によって強化されることがわかっている。その鍵をにぎるのがNK(natural killer)細胞と呼ばれるものだ。
NK細胞は、病原菌に限らず体内で異物と判断したものを殺す。NK細胞が体内で出会ったがんやウイルス細胞を4時間以内に殺す能力をNK活性と呼び、これを利用した、がん免疫治療の研究に注目が集まっている。
一般的に、健康な人は誰でもNK細胞を持つが、NK活性の能力には20%から60%と個人差がある。NK活性の低い人は、風邪にかかりやすく治りにくい。また、感染症での死亡率も高い。
つまり、インフルエンザなどの感染症やがんを防ぐには、NK活性を上げることが必要なのである。NK活性は心地よい時には上がり、疲労時や精神的ストレスで下がるという具合に、いろいろな要素に影響を受ける。NK細胞の働きを活発に保つのはなかなか難しいことだ。
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■ヨーグルト NK細胞を活性化、インフルエンザに効く
NK活性を上げるには体に良いものを多く食べ、悪いものは排除するといった食生活も大切だ。ヨーグルト、納豆、シイタケなど、ある種の生きた細菌や菌体の摂取は健康を増進し、多くの疾患へのリスクを減らすのではないかと考えられてきた。中でも生きた微生物であるプロバイオティックスは、適当量摂取することで、腸内環境を改善し健康によい効果があることがわかってきた。
おなかの中というのは、血液が流れる体内とは異なり皮膚や髪のように表面的なものだ。それでも乳酸菌の飲用でNK活性が上がるのは、腸内免疫系を刺激するからだ。そのしくみは、特定の乳酸菌から作られるEPS(多糖体)が腸管にあるM細胞を通ることで、樹状細胞(マクロファージ)を介してNK細胞に働きかけ、NK活性が上がるのではないか考えられている。
先ほども述べたようにNK活性が上がれば自然免疫力がアップし、病気にかかりにくく、もしかかっても治癒しやすい体になるわけだ。そこで、ひとつのデータに注目したい。
2010年9月から11年3月まで、佐賀県有田町で健康増進活動の一環として、約2000人の小中学生が約半年間、「R-1乳酸菌」を使用したヨーグルトを毎日飲み続けたところ、周辺地区と比較してインフルエンザ累積感染率が10分の1程度に激減したのだ。この期間の佐賀県全体の小学生のインフルエンザ(A、B、新型)感染率が4.37%であったのに対しても、有田町では0.64%にとどまった。
また、中学生では、佐賀県全体が2.57%に対し、0.31%とやはり低い水準に抑えられている。
「R-1乳酸菌」を使用したヨーグルトは、全般的なインフルエンザウイルス感染に対する予防効果がある可能性が示唆されたわけだ。
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■ワクチン効果高める「R-1乳酸菌」セミナーで発表
□新潟大学名誉教授、新潟青陵大学教授・看護福祉心理学部長 鈴木宏氏
□順天堂大学医学部免疫学講座准教授・竹田和由氏
□順天堂大学医学部免疫学講座特任教授・奥村康氏
「R-1乳酸菌」の効果が注目される中、10月30日(水)、東京都千代田区紀尾井町のホテルニューオータニにおいて、「賢いインフルエンザ対策-新たに判明した、ワクチンの効果を高める乳酸菌の作用」と題し、鈴木宏・新潟大学名誉教授、竹田和由・順天堂大学准教授、奥村康・順天堂大学特任教授によるセミナーが行われた。その中で竹田准教授は「R-1乳酸菌」のインフルエンザ予防効果について発表した。
インフルエンザ予防のためのワクチン接種は多くの人に有効だが、実は、すべての人でウイルスに負けないだけの十分な量の抗体が作られるとはかぎらないという落とし穴がある。その人の体質やその時の体の状態によっては作る抗体が少ない場合もあるのだ。
順天堂大学医学部の竹田准教授らのグループは、「R-1乳酸菌」を使用したヨーグルトを1日112ミリリットルまたは乳酸菌の入っていない酸性乳飲料(プラセボ)をインフルエンザワクチンを接種する医学部男子大学生40人に飲んでもらい、インフルエンザ抗体の量(抗体価)を測定した。その結果、感染防御のための十分な抗体量がある人の割合を示す「抗体保有率」に差がでた。
ワクチン接種後で抗体の量がどれだけ変化したかを見る「抗体変化率」は、プラセボ群がA型(H1N1)、(H3N2)、B型の3種類の抗体すべてで有効な数値に上がらなかったのに対し、「R-1乳酸菌」を使用したヨーグルト群がプラセボ群に比べて有意に高くなる結果となった。つまり、「ワクチン」プラス「乳酸菌(ヨーグルト)」で、ワクチンの効果を高めることができる可能性がある。NK活性と抗体生産に関するするこれらの研究から、「『R-1乳酸菌』は自然免疫と獲得免疫の両方の免疫系を活性化する可能性があると考えています」と竹田准教授は話した。
このように、継続的に特定のヨーグルトなどで「R-1乳酸菌」を摂取することで、自然免疫、獲得免疫の両方のレベルを上げ、風邪やインフルエンザを予防することができる。基本の手洗い、うがい、ワクチン接種とそれぞれ単一ではなく、総合対策が有効とされるインフルエンザ予防。感染を諦めている人と予防を心がける人、この冬の体調に大きな差が出ることは確かだろう。
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【プロフィル】鈴木宏
すずき・ひろし 1944年生まれ。医学博士。東北大学医学部卒。同付属病院講師を経て、WHO西太平洋事務局感染症対策課長。96年新潟大学医学部教授(公衆衛生学)、2010年新潟青陵大学教授、看護福祉心理学部長。乳幼児急性下痢症の病原がロタウイルスであることを特定。現在は文部科学省感染症研究ネットワーク推進プログラム プログラムオフィサー、新潟県新型インフルエンザ対策委員も務める。山形大学、信州大学非常勤講師。
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【プロフィル】竹田和由
たけだ・かずよし 東北大学大学院歯学研究科博士課程修了。アメリカ留学後、新潟大学医学部医動物学講座を経て、順天堂大学医学部免疫学講座。2000年日本癌学会奨励賞を受賞。専門は免疫学(NK細胞・癌免疫)。
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【プロフィル】奥村康
おくむら・こう 1942年生まれ。医学博士。千葉大学大学院医学研究科修了。スタンフォード大学医学部留学、東京大学医学部講師を経て84年から順天堂大学医学部免疫学講座教授。2000年同大学医学部長。サプレッサーT細胞の発見者。ベルツ賞、高松宮賞など受賞歴多数。免疫学の第一人者。