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中小企業、厳しさ増す採用活動 景気回復で大手に人材集中

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中小企業、厳しさ増す採用活動 景気回復で大手に人材集中

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 2015年3月に卒業する大学生の就職活動が始まった。リクルートホールディングスの調査によると、13%の企業が「採用が増える見通し」と回答、しかも企業規模が大きくなるほど「増える」との回答割合が高くなった。好業績を背景に大手企業を中心に採用意欲が高まる中、不安を抱えているのが中小・ベンチャー企業。大手企業に人材が集中し、例年以上に厳しい採用活動を強いられる可能性が高まっているからだ。

 中小企業経営者が加盟する東京中小企業家同友会は毎年、会員による合同企業説明会を開催している。景気が悪くなると来場する学生が増え、好転すると大手が採用に力を入れるため減る。

 こんなサイクルを繰り返してきた経験から、15年卒を対象とする採用活動について「大手へ流れる動きに拍車がかかる」と関係者は悲観的だ。このほど開催したイベントでは「前年に比べ参加者は3割程度減る」とみていたが、ふたを開けると半分近くに達した。

 就職支援などを展開するディスコ(東京都文京区)が11月下旬に実施した調査では、大手企業狙いの学生は4割を超えた。これに対し「中堅中小企業を中心に」就職活動を行うとする学生は1割にすぎず、前年を下回った。5割近くは「規模にこだわらない」と回答しているが、「できれば大手」というのが偽らざる本音だろう。

 40社が合同イベント

 こうした中、形式にとらわれない手法で優秀な人材を採用しようとする動きが中小・ベンチャー企業の中から出てきた。

 11月中旬。東京・浅草のビルに800人近くの学生が続々と入っていった。目指すは「ベンチャーズライブ」という企業説明会。伸び盛りのベンチャー40社がスクラムを組んで集めた学生たちだ。

 このイベントに参画した一社が、企業向けソリューション事業を手がけるオロ(東京都目黒区)。現在の社員は250人。主に中途採用により増やしてきたが、「新卒メンバーを中心に新しい企業文化をつくりたい」(人事採用チームの吉田奨マネージャー)との考えに基づき、イベントに加わった。

 知名度が低いベンチャーが単独で採用活動を行っても、ほしい学生にはなかなか足を運んでもらえない。そこで、ベンチャーが結束し一大勢力となって開けば、大手を狙う優秀な学生も興味を持ってくれるかもしれない。

 この思いは、オロだけではなく40社に共通する。イベントでのグループディスカッションなどで「優秀」と判断された80人の学生は特典として、1月に開かれる合同選考会(40社の1次選考会に相当)に招かれる。

 就職待望組を“救済”

 リクルートキャリアによると10月1日時点で、内定を得ていない14年3月卒業見込みの学生は2割弱。学生は一般的に、大手企業の訪問から始める。しかし、内定を待っているうちに、次の企業にアプローチするタイミングを逃してしまうといった事例が少なくない。

 こうした就職待望組を“救済”するため、採用活動を続けている企業に紹介しているのが、転職支援のジェイック(東京都千代田区)だ。法政大学や日本大学などと提携している。

 11月下旬に東洋大学で開催した理系学生向け学内選考会には自動ドアや業務用送風機メーカーなど、ニッチな業界ながら高いシェアを誇る企業18社が集まった。

 参加した大手製版会社は、世界に数台しかない最新鋭機械を導入したのを機に「機械を使いこなし、製作のことを話せる技術営業職を育てたい」(人事担当者)という思いで臨んだ。予想以上に優秀な学生と出会うことができ、内定につながったという。

 米国は優秀な学生ほどベンチャーの門をたたくという風土が形成されている。日本の場合、投資など起業支援の環境がまだまだ未整備な上、学生の大手志向が根強く、ベンチャーを立ち上げたり中小企業を大きくさせたいという気概に乏しい。中小・ベンチャーも、せっかく採用した優秀な学生を育成しきれずにいる。

 ジェイックの古庄拓シニアマネージャーは「大手と同じ姿勢で優秀な人材の確保に動くのではなく、どういった人材を採用したいかを明確に考えるときがきた」と指摘する。新しい形の採用活動もその表れだ。

 ブラック企業の問題などもあって学生によるブランド志向がさらに強まる中、中小・ベンチャー企業の採用活動は正念場を迎えようとしている。(伊藤俊祐)

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