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【著者は語る】「今上天皇 つくらざる尊厳 級友が綴る明仁親王」

ニュースカテゴリ:暮らしの書評

【著者は語る】「今上天皇 つくらざる尊厳 級友が綴る明仁親王」

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 □元日産陸送常任監査役・明石元紹氏

 ■皇室教育に献身された人々の努力

 今上陛下と学習院時代に級友であった著者はともに傘寿を迎えました。心臓の手術など健康の難関も乗り越え、陛下は皇后さまの大きな支えのもと、真剣な責任感で象徴元首のあり方を求め行動されておられます。著者は幼時からご一緒に学び、皇太子時代はスポーツでお付き合いしてきました。

 陛下のご成長過程は、戦争の時代と敗戦による窮乏の日本でありました。

 皇室の存在位置は微妙に変わってきましたが、この本で表現したかったのは、著者が直接に接した時代ごとの教育者、奉職者の姿であり、皇子(おうじ)を育てるという責務からの真剣な献身ぶりであります。それもゆとりと広い視野に裏打ちされていたことが陛下の今日にどれほど役立ったかしれません。

 象徴的なのは、教育参与の小泉信三博士であり、英語教師の米国人、エリザベス・グレイ・ヴァイニング夫人でありました。小泉博士は陛下に人の道を教え、ヴァイニング夫人は自立の心を教えました。また2人は共通して人への限りない慈しみと国際性を尊びました。

 著者は、あまり世の中で知られていない戦中戦後の皇室関連の教育、指導がどのように進み、影響力を発揮したか。その実態が正しく理解され、そのために献身された人々の努力を今後の日本社会の糧にしたいと思って書きました。

 わが国における皇室の今後についても課題はあります。しかし永年、陛下の日常を垣間見て、何事にも視点の違いを痛感します。お生まれのときからの立場の宿命、これが無私を培い、ご努力で全ての人の幸せを想います。その延長に平和の追求、犠牲者への慰霊の実践があります。こういうものの影響が、国民を精神的に幸せにし、国家の品格をつくるものではないでしょうか。

 とかく歴史はそのときの政治に都合のよい方向で捏造(ねつぞう)されます。些細(ささい)なことでも真実を書き残すことは後世への義務と考えます。世の中が合理化されると、逆に視野が狭くなり、人間に心のゆとりが消えるのを怖れます。(1900円(税別) 講談社)

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【プロフィル】明石元紹

 あかし・もとつぐ 1934年生まれ。学習院で幼少より今上天皇と同級。高等科では一緒に馬術部で活躍。慶應義塾大学卒、日産自動車勤務、日産プリンス東京販売取締役、日産陸送常任監査役などを歴任。傍らで学習院大学馬術部監督を務め、両陛下とポロ、テニスで交流。最近十数年、毎年、油絵で個展開催。

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