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糖尿病の合併症予防 連携手帳活用や心理的ケアも

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

糖尿病の合併症予防 連携手帳活用や心理的ケアも

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日本糖尿病協会は「糖尿病連携手帳」を無料で配布している。申し込みは、82円切手を同封し、「〒102-0083東京都千代田区麹町2の2の4、麹町セントラルビル8階日本糖尿病協会」へ  世界的に患者が増加している糖尿病。日本の患者は約950万人で、この5年で約60万人増加し、合併症による医療費増加は大きな問題となっている。最近の研究では、連携手帳の利用や心理的ケアを行うことで治療に良い影響を与えることが報告されている。(平沢裕子)

 半数が目標未達成

 糖尿病は血糖値が高くなる病気。初期には自覚症状がほとんどないこともあり、健康診断で「糖尿病の疑いがある」と指摘されても放置している人は少なくない。しかし、糖尿病が進み、血糖値が高い状態が続くと、細い血管が詰まり、網膜症や腎症、神経障害の合併症が起きやすくなる。太い血管が動脈硬化を起こし、脳卒中や心筋梗塞などの合併症となるリスクも高い。

 糖尿病が強く疑われるのは、過去1~2カ月の血糖値の平均を示す「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」が6・5%以上の人。日本糖尿病学会は、「HbA1c7・0%未満」を合併症予防のための目標値として定めている。しかし、国立循環器病研究センターなどが大阪・豊能地区を対象に実施した調査では、約半数がこの目標を達していなかった。中でも50代後半から60代でHbA1cが高い人が多かった。

 同センター糖尿病・代謝内科の岸本一郎医長は「この年代は若者や高齢者に比べ、血糖コントロールについての知識はある。しかし、仕事や家族の介護などで多忙なためか、食事の管理や運動が十分にできないようだ」と指摘する。

 糖尿病患者の8割が地域のかかりつけ医など糖尿病を専門としない医師の下で診療を受けている。このため、合併症予防には専門医とかかりつけ医の医療連携が欠かせない。日本糖尿病協会が発行する「糖尿病連携手帳」は検査値や治療内容、合併症の検査所見などが記録でき、医療連携を円滑に行うのに役立つツールだ。調査では、手帳を所持している人は所持していない人に比べ、眼科の定期受診の割合が高いことが分かっている。

 「手帳所持者のほとんどがHbA1c値を把握しており、望ましい療養行動につながっていた。今後、手帳をさらに普及し、地域の連携を推進する必要がある」(岸本医長)

 状況把握を

 欧米先進国など世界17カ国が参加して行われた調査では、日本は他国と比較して、HbA1cの検査実施率は高いが、足の検査や食事の種類を聞くなど患者の状況を把握するための質問の実施率が低い傾向にあった。

 医療従事者が患者の日常生活の状況を把握することは、患者が治療方針に積極的に関与することにつながり、治療効果に良い影響を与える。日本の調査を担当した奈良県立医科大糖尿病学講座の石井均教授は「日本では医療従事者と患者さんのコミュニケーションが不足している。心理的ケアができる医療従事者を育てることは今後の課題」。

 岸本医長は「糖尿病は症状がないうちに合併症が進行するため、重症になりやすい。脳卒中や腎臓病、失明などを予防するためにも患者さんの知識と自覚による早めの対処が大切だ」と話している。

 ■メタボ健診の糖尿病指標、今月から国際標準に変更

 中高年を対象にした国の特定健診・特定保健指導(メタボ健診)で、3月まで使われていた診断基準の数値「JDS」が、今月から国際標準の「NGSP」に変わった。JDSは日本独自の数値で、平成24年3月までは多くの医療機関で使われていたが、同年4月からメタボ健診を除いてNGSPに変更されていた。

 JDSに0.4ポイント上乗せしたものがNGSPの数値。メタボ健診の診断基準はJDSで「6.1%以上」だったが、NGSPでは「6.5%以上」となる。

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