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「私、実はチャック女子です」 キャリアウーマンが語る女性登用の実態

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

「私、実はチャック女子です」 キャリアウーマンが語る女性登用の実態

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キャリア上の課題や悩みについて、他企業の先輩や同世代と語り合う女性たち=大阪府枚方市  「チャック女子」という言葉をご存じだろうか。企業戦士として男社会を勝ち抜いた女性は、思考回路が“男勝り”になりがちだ。そんな女性の外見を着ぐるみに見立て、チャックを下ろして脱ぎ捨てると男性の意識がむき出しになるという意味だ。男性と同じような働き方ができるチャック女子ばかりを登用しようとしても、家庭を顧みなくていいスーパーウーマンはそんなにいない。働き手の減少が予想されるなか、実力ある人材を確保するには企業も結婚や出産などの事情を認め、女性らしく活躍できる環境が必要だ。(石川有紀)

 10大疾病

 「私、実はチャック女子です。部下の女性とどう接したらいいのか…」

 こう打ち明けたのは大手電機メーカー勤務の女性。男社会で競争するため男性同様に働き、仕事中心の生活を送ってきた自身を振り返り、「女子の着ぐるみを着た男性=チャック女子」と表現したのだ。後に続く後輩女性たちのためにも、今の働き方でいいのかと悩んでいるという。

 9月11日、関西企業で働く女性のキャリア形成について考える勉強会「ウーマンズ・ネットワーキング・フォーラム・イン大阪」が大阪府枚方市で開かれた。経営コンサルタントの岡島悦子・プロノバ社長が基調講演。商社や外資系コンサル会社などでキャリアを積んだ経験と重ね合わせて、働く女性が陥りやすい落とし穴を紹介した。

 意識的に男性と同化するチャック女子だけでなく、上司や同僚の視線を気にして仕事に不要な気配りばかりするのが“嫌われたくない病”。自分を過小評価するあまり昇進を断ってしまう“出世嫌悪病”など「10大疾病」として解説。「小さな実績を重ねて自信を持てば、男女関係なくプロとして認められる」「女性は自分を過小評価しがちで、ポジションが人を成長させる」と指摘した。

 人材確保の重大課題

 少子高齢化の影響で15歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少が続く日本。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の効果で景気が上向き、すでに小売りや飲食、建設などの業種で人手不足が目立っている。今後10年で、団塊世代が後期高齢者となり、「多くの企業で社員の3人に1人が介護を抱える」(東レ経営研究所の渥美由喜・ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長)との指摘もある。

 つまり、企業にとっては女性や高齢者、外国人を含めた人材の多様性と柔軟な働き方を受け入れる「ダイバーシティ」が、実力ある人材を確保するうえで重要な課題となっているのだ。

 現状では、女性の6割超は第一子出産後に仕事を辞めているとされる。岡島さんは、「多様性のある組織運営は複雑で難しいが、いろんな考え方や発想が入り交じるためイノベーションによる成長が期待できる」と主張した。

 地に足のついた女性活躍を

 フォーラムには約600人が参加。若手や管理職ごとの分科会でも議論が繰り広げられ、参加者は年代や国籍などによってキャリアに不安を抱いていることが浮き彫りになった。

 「日本人と同じように仕事をしないといけないと悩んでいた」と話すのは、クボタ人事部で韓国籍を持つ黄善敏(ファン・ソンミン)さん(27)。フォーラムに参加して「日本人とは異なる考え方を仕事に生かすこともできると、前向きに考えられるようになった」と話した。

 社内に結婚、出産して働き続けている先輩がいないことに不安を抱えていた帝人グループの女性社員(31)は「他社の若手社員とライフプランを話すなかで、自分の軸をもって仕事も人生も考えないといけない」と気付いたという。

 一方、管理職やリーダーとして組織を牽引(けんいん)する立場の女性からは「自分たちは先輩のやり方を見て仕事を覚えたが、若手は指示待ちばかり」「意欲的な人と現状維持タイプの人と仕事をどう任せていくべきか悩んでいる」などの声が上がった。

 これに対し、日本生命保険の山内千鶴サービス企画部担当部長(57)は「仕事の必要性や目的を説明し、考え方を共有することが大切だ」とアドバイスし、期限を区切って仕事を任せ、進捗(しんちょく)を確かめるなど具体的な方法も提案していた。

 クボタのブランド推進室長の廣瀬文栄さん(40)は「リーダー世代の女性の多くが上司を気にしてリーダーとして組織を率いることに遠慮してしまう。もっと自信をもって、どういう組織を目指すのか考えて」とエールを送った。

 日本では企業の女性の幹部登用が不十分といわれ、職場では女性の幹部や幹部候補らは少数派だ。今回のフォーラムでは他社で同じ悩みや課題に直面する女性幹部や幹部候補と交流することで刺激を与えることは間違いない。

 それでそれぞれが課題を乗り越えるきっかけになれば、政府が成長戦略の柱に据えた「女性の活躍推進」が地に足がついたものになるのかもしれない。

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