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【2015春闘】60年目の論点(下)格差是正 中小・非正規の底上げ急務
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自動車総連の中央委員会では6000円以上のベアを要求する方針などを決めた=15日、名古屋市熱田区 経団連に加盟する大手企業と、連合に加盟する労働組合を中心に展開してきた春闘だが、60年にわたる日本経済の産業構造の変化に伴い、産業の裾野へ与える波及力が弱まっているとの指摘もある。また、増加を続ける非正規労働者の待遇改善にどう取り組むかも、春闘が解決すべき課題として浮上している。今春闘で、労使は格差の是正にどう取り組むのか。
◆トリクルダウン頼み
「山に来た、里に来た、野にも来た」。経団連が春闘の指針である労働政策委員会報告を発表した20日、宮原耕治副会長は会見で、日本経済の足元の現状を童謡の「春が来た」に例え、大企業の賃上げ効果が広く普及していくことに期待を示した。
しかし、大企業が潤えば、取引先や下請けの中小企業や地方企業にその恩恵が拡散するという「トリクルダウン効果」を信じる経済関係者は少ない。日本商工会議所の三村明夫会頭は「多くの中小企業が賃上げするには、価格転嫁ができるなど経営環境が整わなければならない」と話す。
また、地方企業の再生に取り組む経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦最高経営責任者(CEO)は「GDP(国内総生産)比で2割程度に過ぎない大企業製造業が賃上げしても、地方企業やサービス業にはほとんど広がらない」との考えを示す。
さらに、安倍晋三政権が目指す経済の好循環が「トリクルダウン効果」に頼っていると指摘し、「経済の好循環のためには、むしろ最低賃金の引き上げを議論すべきだ」と提起する。
◆労組加盟わずか7%
一方、労使は、非正規労働者と正規労働者の格差是正という大きな課題にも直面している。
産業構造で「山」の頂点ともいえる位置にあり、春闘の流れを左右してきた自動車業界が、格差是正に向けて動き出した。自動車総連は、各企業に直接雇用されている非正規労働者の賃金改善を初めて要求基準に盛り込んだ。
名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開かれた自動車総連の第82回中央委員会で、相原康伸会長は「同じ自動車産業で働く『人』に焦点を当て、非正規労働者を賃金引き上げの対象として、底上げに取り組む」と力を込めた。
背景には非正規労働者の増加がある。自動車産業の従業員102万人のうち非正規は19万8000人に上り、全体の19.4%を占めている。だが、労働組合に加盟している非正規労働者は約7%にすぎない。
厚生労働省によると、非正規労働者は、1993年から2003年までの間に増加し、現在まで緩やかに増えている。13年の平均で、役員を除く雇用者全体の36.7%が非正規労働者だ。
非正規労働者の待遇改善に取り組むUAゼンセンの逢見直人会長は「非正規労働者の賃金水準は低い。家計の補助として働いている場合は家計の足しになるが、自ら生計を立てなければならない労働者は、それでは暮らせないというケースもある」と賃金引き上げの意義を説明する。(春闘取材班)