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SF小説、中国が熱い! 日本語版も相次ぎ刊行、隆盛の背景には何が

 「3層」の北京

 『三体』の成功も呼び水となり中国では近年一大SFブームが起きている。早稲田大の千野拓政教授(中国近現代文学・文化)によると、大都市の書店は軒並みSF専用棚に大きなスペースを割いているという。

 若い書き手も続々登場しており邦訳出版も着々と進む。昨年には中国出身の米作家、ケン・リュウさんが編者を務め、中国の若手作家7人のSF作品を集めた『折りたたみ北京』の邦訳(早川書房)が刊行され話題に。同書で紹介された女性作家の一人、1984年生まれのハオ・ジンファンさんの『ハオ・ジンファン短篇集』(及川茜訳、白水社)は今年3月の出版から3カ月で重版された。

 収録作の一つ、2016年にヒューゴー賞(中編部門)を受けた「北京 折りたたみの都市」の舞台は、貧富の差によって3層構造に分割された北京が舞台。最下層が暮らす「第三空間」のごみ処理施設で働く主人公は、お金を工面するために富裕層が集う「第一空間」へ果敢に忍び込む…。奇抜な設定の中に、人口の過密や経済格差、機械化による人間の疎外といった現在進行形の問題に対する批評意識と弱者への温かな視線が息づく。担当編集者の杉本貴美代さんは「現代の中国が抱える問題を扱いつつ、ドラマチックな展開や詩情あふれる表現が生きている。それが読者の心をとらえたのでは」と話す。

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