エアサスは乗り心地が良く、それでいてフラットライドを実現している。決して足回りが硬く感じることがないのに、コーナーを俊敏に駆け回るのは、前後バランスが整っていることと無関係ではあるまい。
ガソリン派を自然にいざなう優しさ
「EVはあくまでも手法のひとつであり、伝統的なジャガーの延長線上にあるのです」-。担当者の言葉に納得した。スポーツカー好きなジャガーらしさが色濃く残っているのである。
90kWhもの大容量バッテリーを搭載することから、米国テスラと比較してしまうのはサガだろう。だが、テスラが「内燃機関に引導を渡す」と鼻息荒く、あからさまな近未来感覚を強調しているのに対してジャガー I-PACEは、これまで馴れ親しんだ内燃機関の良さを失うことなく、最新の技術と融合させている点が決定的に異なる。
テスラは過剰にEV感を強調しているがために、たしかに異次元空間で運ばれている喜びがある。だがそれが鼻につくのも事実だ。ジャガー I-PACEには、これほど本格的に開発したEVであるのにもかかわらず、ガソリン肯定派を自然にいざなう優しさがある。
欧州カーオブザイヤーに輝いたのは、いたずらな先進性だけではなく、クルマとしての正当性が評価されたからなのだと思う。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。