ライフ

肉肉しい食感とうまみ ホロリほどける「プルドポーク」は日本人の舌にも合う

 【近ごろ都に流行るもの】

 日本でほとんど知られていなかったアメリカの伝統料理「プルドポーク」の人気が広がりつつある。脂身の少ない豚の腕や肩の肉塊を低温でじっくり加熱。武骨な見た目とは裏腹に、ホロリと崩れる柔らかさが特徴で、力を入れずにPulled(プルド=引っ張った・裂いた)できる。今年の新語・流行語大賞にノミネートされた「肉肉しい」食感とうまみは、日本人の味覚にもマッチ。手頃な米国産豚肉とともに、一気に身近になるかも? 

 隅田川にかかる清洲橋の東岸にあるバーベキュー料理店「ピットマンズ」(東京都江東区)。水面を臨むテーブルに、香ばしい空気が漂ってきた。バーガーを大口を開けてほおばる。弾力のあるバンズをかみしめるたび、ホロホロにほどけた肉の間から、ジュワ~ジュワとうまみがとろけだす…。

 同店で最も売れているのがこのプルドポークバーカー(ポテト・サラダ・ドリンクバー付き1650円)だ。客入りの多い週末、1日約160食出るランチセットの3割以上を占める。「豚肉のイメージを覆す柔らかさで、小さなお子さんからシニアまで食べやすくシェアもしやすい。平日は30~50代のオシャレな女性が中心、休日はカップルやファミリー層など、幅広く注文されています」と広報担当の天田満美さん(48)。

 脂っぽさやクセがない。米国産豚肩ロースの塊をスパイスとハーブ、ビネガーのタレに漬け込み、店内の溶岩石レンガのグリルで約9時間、低温で熱を入れる。蒸し焼きなどの工夫で肉内部のジューシーさを保っているそうだ。

 クラフトビール醸造所を併設したこの店は、首都圏を中心に米国式のバーベキュー場を運営するヒーロー(本社・東京都国立市)の新業態として平成29年4月にオープン。笹尾一純ディレクター(41)は「プルドポークは米国のバーベキュー文化の代表的料理。夜のみのメニューでしたが、今春から昼のバーガー提供を始め、評判が広がりました」と話す。

 奴隷として連れてこられたアフリカ系の人々に由来

 プルドポークは、かつて奴隷として米国南部に連れてこられたアフリカ系の人々がバーベキューの調理番を務めていた-という歴史の中から生まれたとされる。

 「ノースカロライナの祖父宅で子供の頃から食べていました。男たちがビールを飲みながら10時間以上かけて燻製する、ちょっとしたお祭り。安くて固い肉が驚くほどに柔らかくなり、うまみが凝縮されるんです」。昨年2月に「ファッツ ザ サンフランシスカン」(東京都武蔵野市)をオープンしたレヴィン・ジョナサンさん(38)が語った。

 伝統製法で店内調理したプルドポークを、ノースカロライナ式のビネガーソースなどでいただけるほか、ピザやタコスをはじめ、さまざまにアレンジして提供。一番人気は副菜の付いたプルドポークバーガーセットで、昼1375円、夜1540円。

 焼きたての塊は褐色で、岩のようにゴロンとしているのに、フォークを入れるとスッと裂ける。2日前までの予約に限るが、4人以上のグループで塊肉をシェアできるコースも用意している。

 来年1月1日に「日米貿易協定」が発効すると、米国産豚肉の関税も引き下げられる。米国食肉輸出連合会(USMEF)では、「この機会にお手頃な米国産豚肉の消費拡大に弾みを付けたい」と、日本でのプルドポークの普及活動を加速させている。

 「日本では『切り落とし』など用途が限られていた腕肉を塊で販売でき、小売り側にもスライス作業の省力化などメリットがある」とマーケティング担当者。食品スーパーへの売り込みと並行し、圧力鍋による家庭用レシピも発信している。

 さらに、前出のヒーローとタイアップしてキッチンカーを走らせ、各地でプルドポークサンド(800円)の販売を計画。12月7、8日に東京都江東区立若洲公園キャンプ場で開かれる「焚火クラブ」のイベントが初出動になるという。

 一方、ハインツ日本(東京都台東区)では、BBQソースで調理済みのほぐし肉を冷凍パウチした業務用のプルドポーク(500グラム)を4月から発売。担当者は「新たなトレンドを取り入れたいが、設備や人手の面で手作りが難しいカフェやベーカリーを中心に活用が増えています」と手応えを語る。

 外・内食で広がり始めたプルドポーク。ワイルドな米国産もいいが、日本の畜産業を応援するつもりで「国産豚」でつくるのも、ありだろう。(重松明子)

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング