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「年金開始おめでとう!」も お祝いがどんどん増える!? 欧米カード事情

 知人や離れて住む家族にお祝いや不幸があった時に、「手紙」だと文面を考えて、長い文を書いて、と非常に時間と気力の要る(そしてしばしば避けてしまう)作業が、「カード」だと1分で済んでしまうのだ。そして受け取る側としても、書いてあるのは一言でも、カード自体も楽しめるし、やっぱりこの時代にポストに届くおたよりは嬉しい。

 オランダではユニークなカードが乱れ咲き

 筆者が現在暮らしているオランダにも、カードの種類は既製品だけでも目が眩むほどある。クリスマスカードは箱買いが基本。バースデーカードは1歳から100歳まで年齢が印字されたものがあり、子ども用、女子用・男子用、10代用、独身者用、クリスマスが近い人用など、どんな相手にもピンポイントでピッタリなものが見つかる。妊娠祝い、スポーツの試合の前祝い、旅行いってらっしゃい祝いなど日本ではわざわざカードは贈らないシチュエーションも祝うカードが多くある一方、体調を崩した人に送る「お大事に」カードや、身近な人に不幸があった人や、以前に亡くなった人の命日にその人の家族に送る「お悔やみ申し上げます」「お心を強く持って」というカードも充実している。こちらは送る方も何と書いていいのか悩むことを察してか、「あなたのことを想っていることを知らせたくてこのカードを送りました」「今は心が空っぽでしょうが、時が経てば美しい思い出がその心を満たしてくれます」など気の利いたメッセージが印刷されているものも多い。

 なんでも「祝ってしまう」ポジティブさ

 その中でも筆者が始めてみた時に猛烈に違和感があったのが、「転職・転居祝い」「年金受給開始祝い」「離婚祝い」である。

 常に能動的に人生の選択をしていくオランダ人にとって、新しい家や仕事はつまり、「以前より(何らかの意味で)いいのが見つかった」ことを意味する。だからお祝いなのだ。それにしてもただの狭苦しい賃貸マンションに引っ越しただけで、「新住居バンザイ!」というカードを各種頂いた時には面食らった。

 また、「年金受給開始おめでとうカード」も非常に一般的。日本でいう「退職祝い」がちょっとしんみりした、「おつかれさま」「これからはつつましい年金暮らしだね」というムードをまとう一方、オランダの「年金祝い」は「おめでとう! 年金もらえるよ!」「年金楽しんで!」「とりあえず年金でビーチ行ってこい!」とちょっと不謹慎なくらい手放しでお祝いである。

 最後に、これは日本でもあってもいいし、ニーズもあろうと思うのが、「離婚祝い」カードだ。しつこいようだが能動的なオランダ人にとっては、離婚も何らかの正当な理由で本人が下した決断。新しい旅立ちを祝うカードがこれまたわんさか各種あるのだ。光の射す森の小道の写真に「これからは自分自身の道を」という文字が入っている…というようなしんみりしたものはむしろ少数派で、「自由おめでとう!」「離婚はつらい。でも結婚生活はもっとつらい」「ハッピー離婚!」とポジティブで、これもまた日本人の筆者の目には不届きに見える…が、もしも自分が当事者で、一人の生活を始めた頃にこんなカードが友達や家族から届いたら、ちょっとほっこりした気持ちになるかもなあとも思う。

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