試乗スケッチ

GT-R“最大の武器”をEVに移植か? 謎の武装リーフ、驚異のパワーと操安性

木下隆之
木下隆之

 ドライバーの意図を電子処理

 アクセルオンで旋回中、フロントの駆動が横グリップに勝り、強いパワーアンダーステアに陥ったとする。その場合、フロントの駆動トルクを抑えて、リア駆動力を高める。前後トルクの移動は、ステアリング舵角とヨーレートセンサーで読み取る。つまり、ドライバーがハンドルを切り込むことでもっと曲がりたいとコンピューターが判断すると、旋回性を高めてくれるのだ。

 散水したスリッピーなテストコースで旋回中、フロントタイヤがスキール音を上げ始めた付近でトルクバランスがリアに移動し、スムーズな旋回姿勢に移行した。ワインディングを攻め立てるような激しい場面ではなく、雨の日の交差点など、日常の穏やかなシチュエーションでも有用なような気がした。

 そこで感じたのは、日産GT-Rの走りの肝である「アテーサE-TS」に酷似している点である。GT-Rの基本はFR駆動である。フロントに搭載したエンジンからのビックトルクをリアタイヤに伝達する。そこで横グリップを越えると、一部をフロントに伝えることでテールスライドを抑える。同時に強くトラクション性能を発揮するのだ。それがGT-Rが世界トップクラスの速さを得た肝である。その考え方を、フロント駆動EVに応用したのだ。

 このところのEV化によって、駆動トルクを4輪に適切に配分し易くなった、そのメリットを活かし、操縦安定性を高める技術は今後益々増えると思う。あの「アテーサE-TS」をEVに搭載する日がくるとは思わなかった。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。

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