オープンカーであるコペンは、ボディ剛性確保に欠かせないルーフを持たない。ルーフを失うことはボディ剛性の約50%を失うとされている。その不足分をバスタブのようなプラットフォームの補強で補わなければならない。とはいうものの、ここまで徹底するものかと感心したのである。
凄腕テストドライバー
だが、ここまでこだわる首謀者の存在で合点がいった。というのも、コペンGRスポーツのセッティングに、ダイハツのトップガンと呼ばれている松本豊氏が加わっていたのである。
自動車メーカーには、走行フィールの味つけを担当する凄腕のテストドライバーが存在する。トヨタの故・成瀬弘氏、日産の加藤博義氏、スバルの辰巳英治氏といった有名なトップガンのように、松本氏はダイハツの味付けを担当するのだ。
しかも、松本氏は、かつてニュルブルクリンク24時間レースに参戦して、苛酷なサーキットで開発を進めたレクサスLFAのメンバーでもある。不肖わたくしもこのプロジェクトにドライバーとして参画しており、氏の並々ならぬクルマへのこだわりを目にしている。
車両に多大な負担が掛かることから“カーブレイクコース”として名高いニュルブルクリンクでマシンを鍛えあげた張本人が、コペンGRスポーツの開発に参画しているのだから、クルマの肝であるボディ剛性確保に一切の抜かりがないのも道理なのである。クルマは機械が作るものではない。人間が作るものなのだとあらためて感じた。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。