好ましい落ち着き感
それは例えば、室内空間からも感じられた。このところのトヨタが好んで筆を振るう、ゴテゴテとしたデザインからの決別が感じられる。曲面をひねったり折ったり、色調を変えたり肌触りをコロコロと変えるようなギミックはない。肘のあたるコンソールは、乗馬の鞍をイメージしたという。すっきりした空間は心地いい。ガンダム世代にはウケがいいから…という大義名分によりゴテゴテとした意匠が増えている中、この落ち着きは好ましい。まさにこれみよがしの華美を嫌う世代をターゲットにしていることが分かるのだ。調光パノラマルーフやデジタルインナーミラーの採用は、先駆けて先進技術を投入するというハリアーの流儀に倣ったからであろう。
採用されるパワーユニットは2タイプ。218psを誇る2.5リッターHVと171ps仕様の2リッターガソリンモデルである。ともに2WDと4WDが選択できる。車格には大きな変更はない。全長と全幅がわずかに伸ばされたにもかかわらず、全高は下げられた。これによって、無骨な印象がさらに抑えられ、クーペ風のシルエットになった。洗練の一歩なのだ。
それでいて、ホイールベースが30mm延長された。それはすなわちトヨタ一押しのTNGAプラットフォームの採用である。タイヤを四隅に配し、エンジンを中心点に寄せることが可能なそれにより、走りの洗練度も高めることに成功している。乗り心地がいいのに、ハンドリングは悪くない。やはり無骨な印象はなく自然な乗り味である。
はっきりいえば、これといった強く印象の残る走り味ではない。動力性能も中庸であり、鋭く加速することもない。フットワークも大人しく、スポーツフィールが備わっているわけではない。だがその薄味こそがハリアーのコンセプトなのだ。まさに華美を嫌う世代へのメッセージなのだ。これからハリアーは、都会を闊歩することになるのだろう。だが、極めて控えめに背景に溶け込み、自然にユーザーに寄り添うのだろうと思う。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。