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キスのあいさつ皆無、マスクはファッション フランス社会に新潮流

 【パリ=三井美奈】フランスでは今月、新型コロナウイルス対策の都市封鎖が大幅に解除された。ウイルス感染を警戒しながら、国民が日常への復帰を進める中、人間関係や食、ファッションに至るまで、社会に新潮流が生まれている。

 空気もおもてなし

 「3つ星シェフ」として有名なアラン・デュカスさんは16日、パリのビストロを3カ月ぶりに再開し、感染対策を披露した。

 客席は2メートル間隔で、透明な板の仕切りを設けた。店員は三色旗を彩ったマスク姿で給仕する。デュカスさんの自慢は、天井に張りめぐらせたピカピカの換気パイプ。「飛沫(ひまつ)の拡散を防ぐ装置です。これまで空調設備は客に隠すものでしたが、これからは『万全の感染対策』を示すことが、もてなしの一つになる」と話す。

 当日は数十人が集まったが、ほほにキスするフランス式あいさつをする人は皆無。自営業のパトリック・ジュアンさんは「ビジネスの握手も自粛です」と笑った。3月半ばから約2カ月続いた外出禁止令を振り返り、「家族と毎日向き合えた。友人との久々の再会で、語り合う幸せを実感した。試練も悪いことばかりではなかった」と話した。

 健康に関心

 パリでは5月以降、飲食店や商店が徐々に再開し、活気が戻りつつある。心理学者のジュリア・ドヒュネスさんは「接触自粛で、みんな儀礼的な握手やキスをやめ、親しい人とだけ触れ合うようになった。必然的に、『自分に誰が大事なのか』を確認することになる」と述べ、人間関係が変わりつつあると指摘する。

 コロナ危機を経て、環境への意識は高まった。地下鉄の混雑を嫌って自転車通勤する人が急増し、パリ市は50キロの自転車道を増設中だ。イダルゴ市長は大気汚染軽減のため、「市内の車両走行を時速30キロに制限する」と公約した。

 食品安全への意識が高まり、地産地消が進む。世論調査では76%が「高くても国産品を買う」と答えた。都会脱出を目指す人も増え、管理職の67%が「緑の多い地方に住みたい」と回答。パリ郊外や地方中堅都市で住宅需要が急増する。

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