試乗スケッチ

新型アコードをどう評価すべきか 見える戦略的苦悩、ホンダらしくない

木下隆之
木下隆之

 クーペスタイルで若返り

 新型アコードが4ドアクーペスタイルとなったのは、若返りである。アコードの購入層は圧倒的に代替えが多いという。それだけアコードが、一度乗ったら続けて所有したいモデルであることでもある。愛されているのだ。だがそれはつまり、ユーザーの高齢化でもある。アコードが今後、末長く愛され続けていくには、若返りも急務なのだ。それが保守的な3ボックスセダンではなく、よりスタイリッシュなボディフォルムとなった理由である。

 内外装のデザインは、ホンダ特有のゴテゴテしたものではなく、明らかにさっぱりしている。落ち着きがある。「若いガンダム世代には機械的なデザインがウケる」-。そんなかつてのコメントと、さっぱりした内外装で若者のハートを引きつけようとするアコード若年化の手法に整合性はないが、ともあれ、ホンダ流の若返りなのだと解釈しよう。

 乗り味は保守的、完成度は整っているが…

 肝心の乗り味は徹底的に保守的だ。ハイブリッドシステムは完成度が高く、EVとガソリン駆動の連携がいい。電気モーターでスムーズに加速し、気がついたらエンジンに受け継いでいた、といった流れが整っている。力強さはない。だがパワー不足は感じない。

 操縦特性にもスポーツ度は感じられない。スタイルはクーペ風になったものの、走りは穏やかなままだ。特に際立っていたのは静粛性だ。エンジンや電気モーターや、あるいはボディが切り裂く空気の存在やロードノイズすらも耳に優しい。その点でも完成度が高いと思えた。かつてのアコードよりもはるかに大人になったのだ。

 いい意味で言えば、完成度が整っている。悪い意味で言えば無個性だ。もはや切れ味の鋭いハンドリングだけが若者向けでもないし、船のように緩やかなフットワークが高齢者の好みでもない。だが、無個性なのは少し物足りないように感じた。ホンダらしくない。シュリンクした日本のミドルセダンの市場で、新型アコードの模索がどう評価されるのかは未知数である。まず、ホンダがブレない軸を持つ必要がある。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。

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