お金で損する人・得する人

被災したら税負担はどうなる? 万一に備え優遇措置を頭に入れておこう

高橋成壽
高橋成壽

義援金収集団体から自治体へ配分される義援金(非課税)

 日本赤十字社など義援金収集団体に集まった義援金は、被災地域の属する都道府県に配布されます。その後、都道府県から被災市町村へ義援金が分配されます。被災市町村が受け取った義援金は、市町村の規程や災害義援金配分委員会などの決定を受け、1人当たりあるいは1戸あたりの義援金として配られます。義援金は非課税です。

 例えば、札幌市の令和2年第1回札幌市災害義援金配分委員会の報告によると、第一次分配金額は下表の通りとなります。

 第一次分配では、義援金が支払われなかった住宅の一部損壊については、第二次分配、第三次分配に含まれています。

 被災されていないが義援金を寄付したいという人の中には、どこの団体に寄付すればいいか迷ったことのある人もいるでしょう。日本赤十字社などの知名度、実績共に十分な団体が義援金収集団体になっている場合は、概ね同じ流れで都道府県を通じて、被災地の住民にお金が回ります。他にも、被災自治体に直接寄付をすることで速やかに復旧作業にお金を使ってもらうということもできるでしょう。義援金の寄付については、特定寄付金に該当し、個人の所得税は寄付金控除の対象、住民税計算上は寄附金税額控除の対象、法人の場合は全額が損金計上となります。※心配な方は最寄りの税務署にご相談ください。

 寄付でなくとも、被災地の物資や特産品を購入することで事業者や事業者に雇用されている人たちを支援するということもできます。

その他の被災者向け税制優遇

 被災者向けの税制優遇は他にもあります。

被災した建物の立替等に係る登録免許税の免除措置:住宅、工場、事務所などの被災者が新たに建物を新築、取得した場合に一定の要件を満たせば登録免許税が免除される制度です。初期費用を少なくする効果があります。

建築公助の請負に関する契約書等の印紙税の非課税:被災した建物に代わる建物を取得する際、不動産売買や建設工事の請負契約、政府系金融機関の貸付の契約調印時に必要な印紙税を非課税とする制度です。

被災自動車に係る自動車重量税の特別還付:被災に伴い自動車が廃車になった場合に、自動車重量税の還付を受けることのできる制度です。水害、土砂災害などで多くの人が利用できる制度と言えるでしょう。

 いかがでしょうか。細かな制度が多いので、どれが使えるのかなどの判断は、被災しないとわからない部分もあります。しかし、国からの支援金や全国からの義援金、所得税の減免、各種税制優遇など、生活再建のための支援が期待できます。

 今後は、情報を網羅したWEBサイトや速やかな支払いの流れなど、全国の人々が安心して暮らせる情報管理や資金管理が求められそうです。

高橋成壽(たかはし・なるひさ)
高橋成壽(たかはし・なるひさ) ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
寿FPコンサルティング株式会社代表取締役
1978年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学総合政策学部卒。金融業界での実務経験を経て2007年にFP会社「寿コンサルティング」を設立。顧客は上場企業の経営者からシングルマザーまで幅広い。専門家ネットワークを活用し、お金に困らない仕組みづくりと豊かな人生設計の提供に励む。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)。無料のFP相談を提供する「ライフプランの窓口」では事務局を務める。

【お金で損する人・得する人】は、FPなどお金のプロたちが、将来後悔しないため、制度に“搾取”されないため知っておきたいお金に関わるノウハウをわかりやすく解説する連載コラムです。アーカイブはこちら

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