鉄道業界インサイド

鉄道苦境、コロナ禍のお盆は車移動にシフト 今後も利用者離れ避けられず?

枝久保達也
枝久保達也

 コロナ対策アピールも虚しく

 JR各社は新幹線車両の車内は空調・換気装置により、計算上、約6~8分で車内の空気が外気と入れ替わることや、車内の乗客が手を触れやすい箇所は定期的に消毒していることなど、新型コロナウイルス対策を積極的にアピールしているが、現時点では利用者離れに歯止めはかかっていない。

 JR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社は、4~6月の第1四半期決算で、いずれもJR発足以来初となる赤字を計上した。赤字額はJR東日本が1553億円、JR東海が726億円、JR西日本が767億円となった。大手私鉄各社も軒並み赤字を計上しているが、JR3社の赤字額が特に大きくなった要因には、新幹線など長距離利用者の激減が挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着くまで、この傾向は変わりそうにないが、感染拡大は数年単位で続くとの見方もあり、正常化への道筋は見えない。

 航空業界も苦戦

 苦境にあえぐのは鉄道だけではない。航空大手の日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)のお盆期間(8月7日~16日)の利用実績も、JALの国内線が前年比67%減の約39万人、ANAが前年比約70%減の約47万人という厳しい結果になった。

 8月3日の新千歳空港発成田空港行きの航空機内で、前後の席に座っていた乗客が新型コロナウイルスに感染したという事態も発生している。感染者同士は面識がなく、会話もなかったといい、航空機内で感染したとは断定できないとしながらも調査が進められている。

 飛行機で乗り合わせた人が感染するとなれば、新幹線の車内でも感染が起こりうるわけで、新幹線を運行するJR5社としては頭の痛い話になってくる。他人との接触を避けるために、移動の際は公共交通機関を避ける動きが進みそうだ。

 実際、高速道路各社が発表したお盆期間(8月7日~8月16日)の利用実績によると、期間中の交通量は前年比約33%の減少に留まっている。他者との接触を避けられるマイカーを利用して帰省しようという動きが広がったことが分かる。

 公共交通はウィズ・コロナ、アフター・コロナの時代を生き残ることができるのか。政府や自治体は今こそ、実効性のある支援策を考える時だ。

枝久保達也(えだくぼ・たつや)
枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。

【鉄道業界インサイド】は鉄道ライターの枝久保達也さんが鉄道業界の歩みや最新ニュース、問題点や将来の展望をビジネス視点から解説するコラムです。更新は原則第4木曜日。アーカイブはこちら

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