競技者レベルの作り込み
ブレーキの形状や材質は、サーキットの連続走行で過熱、摩耗し、性能が低下するその領域での耐久性を求めている。もはやレースで戦う競技車レベルの作り込みなのである。
もう一度確認しておきたい。このクルマはレーシングカーではなく、登録番号が取得可能で、市街地を走ることも許された4ドアセダンなのである。ただし、魂はコンペティションの世界にある。つまりはホンダの魂なのである。だからサーキットが似合う。
市販車では到底対峙(たいじ)できない鈴鹿サーキットでさえ、シビック・タイプRがコースを持て余すことはない。ストレートでは軽々と230km/hに達し、そこからのハードブレーキングでも強烈な減速Gを見舞う。根性試しの高速コーナーにも200km/hオーバーの速度からアプローチ可能だ。
鈴鹿サーキットにおいて2分23秒9で走り切るのは、一部のプロドライバーのみがのぞける世界であり、あるいは一部のレーシングマシンのみに踏み入ることができる速度域である。
走りに熱く、最速でなければ気がすまないホンダの情熱が詰め込まれている。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。