「ランエボ」譲りのシステム
ブレーキ制御が操縦安定性を担保してもいる。コーナリング中、ドライバーはアクセルペブルに足を乗せており、ブレーキペダルに触れていない場面でさえも、必要とあらばクルマ側が自動で、前後左右のブレーキをかけるという芸当もやってのける。これによって、旋回性を強調するばかりか、スピンモーメントからも救ってくれる。常に安定した挙動をキープするのである。
それこそ、三菱が誇る4輪駆動力制御技術である(ほんの一端だが)。
とはいえ、走行中に前後駆動力が変化していることを感じることはほとんどない。人間の感覚に溶け込むように、自然なフィーリングで旋回性をコントロールしている。これみよがしの制御ではない点は評価が高い。
4輪制御技術があらわになる瞬間があるとすれば、「スノーモード」でドライブしたときであろう。
エクリプスクロスPHEVには、ドライブモードが設定されており、日常の「ノーマルモード」に加え、雪道での走りやすさを強調したスノーモード、そしてラフロードの走行に適した「グラベルモード」が任意に選べる。
そしてさらに、舗装路で軽快な走りを得やすい「ターマックモード」が設定されているのだ。このターマックモードは、旋回性を強調する設定になっている。モーターパワーも強調される。アクセルオフによる減速感も強い。スポーツドライビングに適したモードなのだ。これこそランサーエボリューション譲りのシステムのように思えた。
エクリプスクロスPHEVは環境性能に優れたSUVであることに疑いはないが、野山を駆け回るようなアクティブなシチュエーションでこそ、生き生きと輝くような気がした。澤瀬博士が手掛けるとこうなる。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。