試乗スケッチ

“アウトバーン”仕様の恐ろしい性能 BMW「M5コンペティション」に脱帽

木下隆之
木下隆之

 力強い減速Gと紳士的なコーナリングマナー

 実は2019年モデルでもサーキット走行を経験しているのだが、2020年モデルとの最大の違いはブレーキングフィーリングである。先代のブレーキ性能も素晴らしかった。ブレーキペダルを踏み込めば踏み込むほど、力強い減速Gが立ち上がった。連続周回でも性能が劣化することがないことにも驚かされた。限界アタックをいつまででも継続することができた。だからもう、これ以上の性能は必要ないのだろうとの結論を導いていた。だが新型は、さらにブレーキングフィールが鋭くなり、確実に止まるようになったのである。上には上があったのか…。あらためて感心させられた。いやはや、恐ろしい。

 コーナリングマナーは紳士的である。パワーがありながら、4輪駆動であることから激しくテールを流すことはない。ブレーキ姿勢も整っているから、ハンドルさえ直進を保っていれば正しく止まる。穏やかなドライブでも殺気は感じるものの、普段のドライブをもこなすのである。

 おそらくこの性能を必要としているのは、速度無制限の区間があるハイウェイ「アウトバーン」を持つドイツだけなのであろう。おそらく300km/h巡航を軽々とこなすに違いなく、そんな速度域に踏み込める道はドイツにしかないからである。

 それで合点がいった。さらに鋭さを増したブレーキ性能が必要な理由である。300km/hで巡航中に、突如としてスロー走行車両が紛れ込んできた時である。300km/hから瞬間的に100km/hまで減速するような、そんな場面のために必要なのだ。

 速く走るために制動力を強化した。速度を出すために止まることを意識したのだ。なるほど、世界にはとてつもない車が存在するものである。

木下隆之(きのした・たかゆき)
木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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