宇宙解明の鍵は「電磁波」の観測
では、なぜガモフは「ビッグバンの発生時に放出された光が、マイクロ波として観測できる」と、予測したのでしょう? それを理解するには、まず「電磁波」を知る必要があります。
ざっくり説明しますと、電磁波とは「電界」と「磁界」が組み合ったものです。金属に電気を流すと磁石になるのと同じ原理であり、電磁波は空間を進むことができます。と言ってもまだピンとこないと思いますが、つまり電磁波とは、医療機器にも使用される「ガンマ線」や「X線」、皮膚などを痛める「紫外線」、ヒトが目視できる「可視光線」、暗視カメラなどに使用される「赤外線」、テレビやラジオなどの「電波」のことであり、これらはすべて同じ原理からなる電磁波の仲間です。
では、それら電磁波の何が違うのかというと「波長」の長さです。もっとも波長が短いのはガンマ線であり、長いのは電波です。また、波長が短い電磁波のほうがエネルギーが高く、ガンマ線は可視光線の100万倍のエネルギーを持っています。
地上の大型望遠鏡や天文観測衛星、宇宙望遠鏡などが搭載する観測機器の多くは、これら電磁波を検出するための装置です。
宇宙は膨張し続けている
ここでもうひとつ必要な情報は、「宇宙は膨張し続けている」という事実です。
冒頭でもご紹介したジュルジュ・ルメートルは、「宇宙は原子の爆発から始まった」という「ビッグバン理論」を、一般相対性理論をベースとした解として導き出し、1927年に発表しました。さらにその2年後、エドウィン・ハッブルが「銀河が地球から遠ざかっている」ことを望遠鏡観測によって確認し、「宇宙が膨張していること」を発見します。
宇宙が膨張しているからには、膨張のはじまりがあったはずです。つまり、ハッブルが発見した宇宙の膨張は、宇宙誕生の瞬間を説くビッグバン理論の正当性を示唆したのです。
ビッグバンによって放出された光は138億年かけて地球へ飛んできましたが、その光が移動する宇宙空間は、ハッブルが観測したように、膨張し続けています。そのため、光の波長も引き伸ばされます。その結果、波長が短い光は、波長の長いマイクロ波へと変異したのです。マイクロ波に変異したこうした光は、「ビッグバンの残り火」と呼ばれています。
ペンジアスとウィルソンがはじめてビッグバンの残り火を観測してから四半世紀後の1989年、NASAによってCOBE(コービー)という観測衛星が打ち上げられました。ベル研究所のアンテナよりもはるかに高精度な機器を搭載したこの人工衛星の観測データは、ビッグバンが本当に発生した証拠を示しました。そして、それを明らかにしたジョージ・スムートとジョン・マザーは2006年、やはりノーベル物理学賞を受賞しています。
軍事衛星が捉えた未知のガンマ線
さて、宇宙を解明する重大なヒントをもたらした、もうひとつの発見をご紹介します。
そのきっかけとなったのは、アメリカ国防総省が1967年に打ち上げた「ヴェラ4号」という軍事衛星です。この人工衛星の任務は、他国の核実験を軌道上から監視することであり、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線を感知します。
しかしある日、ヴェラが捕捉したデータに奇妙な影が映ります。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明しました。続いて打ち上げられた5号と6号も謎のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出した結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められました。
ガンマ線バーストとは、太陽よりも大きな質量を持つ恒星が爆発(超新星爆発)する際に、閃光のように放出される電磁波のことです。エネルギー量が極度に高く、太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵すると言われています。もし、その爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、その天体はブラックホールに姿を変えると考えられています。