ボディはホンダの伝統でもある「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」がベースにあることはあきらかだ。オーバーハングを極力切り詰め、タイヤをボディの四隅に配している。ボディはコンパクトでも、室内は驚くほど広い。マン・マキシマム/メカ・ミニマムの思想を裏切ることなく開発されているのだ。
斬新なのは、車内をリビングとして演出していることだ。着座すると正面に目にするのはワイドな5画面ディスプレイであり、数々の情報を表示する。そこに集約したことで、いかにもメカニズム的なスイッチやボタンを減らすことに成功。自宅のリビングで体を崩しているかのような落ち着いた空間が得られる。
ウッド調のダッシュボードはリビングのテーブルのようであり、シートはソファのようにモダンだ。車内灯はダウンライトであり、USBポートや100Vソケットも豊富でモバイル系の充電にも対応している。EVモデルは充電時間という課題を抱えている。これならば退屈な充電のための待ち時間さえも苦痛ではないような気がした。
とはいえ、走行フィールはホンダらしさを失っていない。加速力は力強く、3リッターガソリンエンジン級のダッシュ力を誇る。低回転域からの加速などは、むしろ3リッターモデルをしのぐ。なおかつ、コーナリング感覚も俊敏だ。基本はシティコミューターだから長距離ドライブを想定していないとはいえ、ワインディングドライブも爽快なのである。
ホンダは2021年を一つの区切りにF1から撤退する。だが、ホンダの伝統であるスポーツ魂は失っていないように思える。その意味も含めて、ホンダeは新生ホンダの救世主なのであろう。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。