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証券の次は銀行 銀行口座のマイナンバー連携で始まる税務調査

高橋成壽
高橋成壽

 ここでは、年間200万円の保険料を贈与する場合、贈与税の申告もなく資金が子供に移転しています。保険料の払込期間が10年、20年と続けば、2000万円、4000万円と巨額の資金が無申告で親族に移転していきます。現状では、このような提案を保険販売側ができてしまうのも問題です。解約時などにマイナンバーと紐付けても、出どころが自己資金であれば、一時所得か年金受取による雑所得による課税となります。資金移動の入り口でも紐付けを行わなければ、資金の出どころの怪しい契約は減ることが無いでしょう。

 そして、このような資金移動を確実に把握するには、後述の銀行口座とマイナンバーの紐付けにより、資金移動が確実に補足される必要があります。でなければ、親族間や第三者間との資金移動による保険契約は適切な課税ができないことになるからです。

 つまり、保険契約の入り口をマイナンバーと紐付けても、資金移動自体を把握しなければ、ブラックボックスの資金移転を減らすことができないのです。

(3)銀行口座のマイナンバー紐付け

筆者が最も大切だと感じているマイナンバー紐付けが銀行口座です。すべての銀行口座がマイナンバー紐付けにより、資金移転や口座残高等確認できるようになると、社会保険制度を大きく変えることができると考えます。

 社会保険制度には「所得再配分機能」があるとされています。現状では、社会保険の受益面では、収入に応じた健康保険料負担、高額療養費の上限、介護保険料負担などが定められています。しかし、資産があるのに収入が低いため資産規模にそぐわない社会保険給付を受けている人はたくさんいます。

 例えば、預貯金が数千万円あるのに健康保険料・介護保険料は最低額、高額療養費の上限も最低額、という場合があります。同様に、年金の受取についてはそもそも収入による縛りがありませんから、資産だけで生活できるような人にも等しく年金が支払われます。今後のさらなる少子化による保険料原資の不足を考えれば、社会保険制度全体と銀行口座のマイナンバー紐付けによる新たな所得再配分を行う必要があるでしょう。

■銀行口座のマイナンバー口座には誰が反対なの?

 銀行口座にマイナンバーが紐づくと、資産を国に補足されるという懸念をされる人が多いとされています。その懸念は、資産の移転など何もしていない、何もする気が無い人に影響するでしょうか。

 持てるものが反対し、持たざるものは反対しない、という状況であれば、特定の利益を得る人たちが反対していると考えることもできます。

 銀行のマイナンバー紐付けに対して、困る人はどのような立場の人でしょう。政治家が政治資金を受取り、汚職資金を保管するのに困ることがあるでしょう。裏金やキックバックを無申告で受け取っている場合は、銀行口座に入金するときに課税庁に把握されたら困るでしょう。

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