大変革期のモビリティ業界を読む

全国初!バスの“サブスク”…MaaSに新風を吹き込む新潟県湯沢町の挑戦

楠田悦子
楠田悦子

 日本でMaaSがモビリティ業界のキーワードとして注目され始めて約3年が経つ。しかしマネタイズ(収益化)、持続可能は体制がつくれない、アプリを作ったが使ってもらえないなど、壁にぶち当たっている企業や地域が非常に多い。

 日本のMaaSの問題点

 このような中、スキーリゾートや温泉地として知られる新潟県湯沢町で日本のMaaSの課題を解決するヒントになるような取り組みが9月12日まで実施されている。ビジョンや持続可能な仕組みづくりから入り、路線バスとホテル送迎バスなどを組み合わせた全国初のバスのサブスクリプション、県内初の定額タクシー、ローカルバスタなどを組み合わせてMaaSレベル4を実現させようと挑戦している野心的な取り組みだ。

 MaaSは欧州発の輸入された概念で、デジタルテクノロジーを活用して、地域にある移動手段を総動員させたり、インフラの最適化を行ったりして、環境にやさしく安全で、クルマの運転ができなくても困らない持続可能な社会を実現するものだ。国、自治体、民間企業などが精力的に取り組んでいる。

 自動運転レベルのようにMaaSにもレベルがあり、5つのレベルに分けられる。

 ・レベル0(統合なし)

 ・レベル1(情報の統合)

 ・レベル2(予約、決済の統合)

 ・レベル3(サービス提供の統合)

 ・レベル4(政策の統合)

 MaaS推進者はより高いレベルに行こうと試行錯誤している。しかし、まだまだ日本ではレベル0が多く、最近ではレベル1、2、3が少しずつ出始めてきているが、実証実験で終わったり、辛口で言えば、観光客や住民が便利になったと実感を得たりするにはほど遠い状況にある。

 MaaSがうまくいってない理由は次の点ではないだろうか。

 ・組織体制も弱い、人材も不足

 ・自治体も交通事業者も財務状況が良くない

 ・移動サービスの質は高いが、交通の結節機能が弱い

 ・MaaSのスマホアプリやシステムを入れることが目的化

 欧州はデジタル化してもうまくいく素地がある

 欧州の公共交通は、地域全体の移動に関するビジョンをつくり、鉄道、バス、トラム、自転車シェアといった移動サービスの計画を立てて、民間企業に運行委託する形をとっている。過去に、乗り継ぐ際の運賃がかさむことなどから、クルマよりも魅力がなくなり利用者離れが起きた歴史などがある。そのため、一元化された運賃体系、相互に連携した路線やダイヤの構築を行う運輸連合など連携する体制をつくり、利便性の高い公共交通を実現している。

 一方、日本の公共交通は、民間の交通事業者の企業努力により保たれている。どこを走るか、いつ走るのか、どのように利用者に伝えるのかなどは、各社が決めている。日本でも近年では民間事業者に任せきりにするのではなく、地域の持続可能な公共交通の仕組みを作るため自治体が公共交通会議を開き、地域全体の移動サービスを調整するようになっていきている。

 しかし、自治体では職員は数年で変わり、公共交通を専門に担当する人も数人だ。民間企業各社は連携がうまくとれず、利用者にとって乗り場が分かりにくい、乗りやすい時刻表になっていない、赤字路線は廃線となり暮らしの移動に困るといった状況になっている。

 このように日本の各地域の実情に合った移動サービスを組み合わせて、住民や観光客の生活の質を向上させて、経済を活性化させるといった理想的な体制は築けていない。クルマの普及や近年では新型コロナウィスルの流行により利用者数を減らした鉄道やバス会社は、前向きな取り組みが難しく、やめたいと思っている会社も多い。

 欧州では、すでに一元的なビジョン、計画、運賃収受などができる組織体制があるので、デジタル化が進めやすく、利用者のコミュニケーションや販売チャネルとしてスマートフォンアプリを入れてもうまく機能する素地がある。一方、日本ではデジタル化を図る前に、地域での一元的なビジョンづくり、計画、利用料の受取り、さらにはさまざまな公共交通を乗り継ぐ際の乗り継ぎ拠点などのインフラ面も整備していかないといけない。もしかすると、導入や運用に費用がかかるデジタル化は必要ない場合すらある。

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