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全国初!バスの“サブスク”…MaaSに新風を吹き込む新潟県湯沢町の挑戦

楠田悦子
楠田悦子

 まずビジョンと組織体制づくりから

 さて、湯沢町での取り組みの紹介に戻ろう。湯沢町は、これまで紹介してきた日本の問題点を踏まえた上で、組織体制、サービス、料金設定や受け取り方などを設計している。専門的な知識がなければ、気づかない工夫があり、他地域にも参考になる部分がたくさんある。

 まず日本では組織体制も弱い点に対して、欧州の運輸連合のような組織体制づくりにチャレンジしている。湯沢版MaaS推進協議会を湯沢町観光まちづくり機構(DMO)、新潟県、湯沢町でつくり、路線バスやホテル送迎バスを走らせている南越後観光、エンゼル観光、そしてタクシー協会と運行委託契約を結び、一元的なビジョン、計画、サービスの質の管理、料金設定や収受ができる体制を作った。これによりMaaSレベル4が実現しやすくなった。

 そして人材不足という点に対しては、MaaSプランナーを設けた。県や自治体職員の異動があり、公共交通事業者でも企画担当者する人がいないのであれば、それを補える人を連れてきて、ポジションを作ったらよいのではないかという発想で、MaaSプランナーは湯沢版MaaS推進協議会、MaaSオペレーター(チケットの販売代行など)、運行事業者に対して、MaaSの企画、改善策の提案、評価など頭脳的部分を担う。このようポジションは日本ではこれまでありそうでなかった。

 自治体も交通事業者も財務状況が良くないことを鑑みて、できるだけ費用のかからないように工夫している。もとからある路線バスを活用し、ホテル送迎バスと新設シャトルで補って毎時2から3本の利便性を確保している。

 ホテル送迎バスは湯沢版MaaS推進協議会が借り上げて運行委託とすることで、温泉やスキーの宿泊施設が各々でバスを保有し運行する負担を軽減させて、観光客の地域内の回遊性を向上させるとともに地域住民も使えるようにした。このように地域にすでにあった移動サービスの使い方を変えて、観光客にも住民に嬉しいように仕上げている。日本では、ホテル送迎バスの宿泊施設間の連携や住民への開放は、実はまだまだ進んでいない。

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