宇宙開発のボラティリティ

中国に続きロシアも宇宙ステーションの独自建設を発表 鮮明化する欧米排除

鈴木喜生
鈴木喜生

【ロスコスモスによるROSSの映像】

 ロスコスモスのドミトリー・ロゴージン事務局長によると、このROSSを「有人小型宇宙船のための宇宙港」とし、ここを足掛かりにさまざまな宇宙探査を実施する予定だという。さらに「他の惑星に行くモジュールのプロトタイプとなるだろう」とのこと。つまりROSSで実証される新型のモジュールは、将来的には有人火星探査用の宇宙機などに発展する可能性を秘めている。

 ロシアの宇宙開発企業であるRSCエネルギアでは、すでにROSSの予備設計、一部モジュールの製造が開始されていて、最初のコア・モジュールの打ち上げは2025年に設定されている。

なぜロシアは独自路線へ転換したのか?

▼ISSに見切り

 独自宇宙ステーションの打ち上げ準備が進められている一方で8月30日、ISSのロシアのモジュールに、また新たな亀裂が複数発見された(ロイター通信)。発生源はISSのコア・モジュール「ザーリャ」で、これは1998年、ISSの中心施設として最初に打ち上げられたモジュールだ。

 先述したとおり、現在ロシアはISSの運用を2025年以降に終了するとしているが、その理由のひとつがISSのロシア区画におけるこうした老朽化だ。ロシア製モジュールにおけるこうした不具合は近年多発しており、2019年9月にもサービス・モジュール「スヴェズダ」で空気漏れが発見されている。

 今回見つかったザーリャの亀裂に関してRSCエネルギアのチーフエンジニアは、「今後、この亀裂が広がる可能性がある」ことを懸念し、また、「2025年以降にこうした機器の不具合が雪崩のように発生する可能性がある」と警告している。米国などが2030年までISSを運用しようとする一方で、ロシアは早々に、ISSに見切りをつけたほうが良いと考えているのだ。

 そうしたロシアのISSに対する及び腰な態度は、モジュールの運用自体にも表れている。

 7月29日、ISSにドッキングした新モジュール「ナウカ」(不意にスラスターが噴射し続ける事故が発生)においても、じつは一時期、今回発表された新宇宙ステーションROSSに転用することが検討されていた。

 また、ROSSの最初のモジュールとして2025年に打ち上げが予定されている「科学エネルギー・モジュール」も、本来は2024年、ISSへドッキングさせる予定だったものだ。つまりロシアはもはやISSの機能拡張に消極的であり、早々に次のステップへ移行することを望んでいるのだ。

▼宇宙ステーション先進国の反発

 ロシアがISSからの離脱を明確化しているのは、その老朽化だけが原因ではない。クリミア危機以来、西欧諸国から受けた経済制裁もその理由のひとつだ。

 ロシアは現在も経済難にあえいでいる。であれば、ISSの維持にかかる膨大な予算を早々に切り上げ、独自のステーションに注力したほうが得策だと考えている。

 アルテミス計画の月軌道周回ステーション「ゲートウェイ」からの離脱は、「アメリカの意向が強すぎる」という不満もあったようだが、さらにもう一点、エアロックの設計に関する問題もあった。アメリカが、アメリカによる新設計のエアロックを提案してきたのだ。

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