宇宙開発のボラティリティ

中国に続きロシアも宇宙ステーションの独自建設を発表 鮮明化する欧米排除

鈴木喜生
鈴木喜生

 ISSが設計寿命をはるかに超えて老朽化し、ゲートウェイにおいてはアメリカの意見を聞き入れなければならない。であれば、限られた予算を最大限に活かすには、独自の宇宙ステーションを独自に建設したほうが良い、という判断が下されたに違いない。ロシアは世界初の宇宙ステーション「サリュート1号」(1971年)を打ち上げ、15年間に渡って「ミール」を運用してきた宇宙ステーション先進国なのである。

ロシアが中国とタッグを組む本気度は?

 ロシアは2020年10月にゲートウェイへの不参加を表明した後、2021年3月には、中国と月面基地の建設において協力する覚書に調印した。この計画では2030年に月面基地を建設する予定である。また中国はこの調印の直後の4月29日、中国独自の宇宙ステーション の建設を開始、そのコア・モジュール「天和」の打ち上げに成功している。

 概して宇宙開発計画には変更が多い。中露両国のこの月面基地に関する本気度はいまだ判然としないが、欧米諸国がロシアに歩み寄らない限り、ロシアは独自路線を貫き、世界からの孤立を回避するためにも中国との協調を歩む可能性は高いだろう。

 しかし、ロシアも欧米諸国と連携する可能性を残している。

新宇宙ステーションの軌道に関して、「その軌道傾斜角は97度から98度が予定されている」と先述したが、じつは「51.6度」の案も残されている。これはISSと同じ傾斜角であり、ロシアよりも緯度の低い他国にも都合の良い軌道となる。

 また、「アメリカ製のエアロックがロシアに提供される」というゲートウェイに関しても、ロシアは「規格を現行の国際基準に則したものにすべきだ」と主張している。つまり、ゲートウェイの計画に完全に組みしないまでも、それが利用できる可能性は残そうとしているのだ。

 ともあれ、1998年から運用されたISSの終焉が近づくにつれ、宇宙ステーションを巡って新たなバランスシートが構築されようとしている。以後数年に渡って我々は、引き続き各国の動向に注目することになるだろう。

出版社の編集長を経て、著者兼フリー編集者へ。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍を手掛けつつ自らも執筆。自著に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』など。編集作品に『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

Recommend

Biz Plus

Ranking

アクセスランキング