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安易な「副業を利用した節税」に注意! 国税庁に否認された事例とは

高橋成壽
高橋成壽

 雑所得では損益通算ができないため、所得税額を減らすには原稿料収入を損益通算できる所得に変更する必要があります。ここで、執筆業という事業を営む事業者になるという選択をするのです。結果として、少ない原稿料では各種経費を賄うことができず事業所得が赤字となります。事業所得の赤字は給与所得と相殺できるため、高所得の医師は所得税の納付を減らすことができたはずだったのです。

 しかし、国税庁側は、年収にして100万円にも満たない収入は本業とは言えず、事業所得という分類を認めないことで、損益通算を封じました。

 この仕組は、会社員と公務員にも適用できます。そのため、節税手法としてそれなりに認知されていると考えられます。

※一般的に公務員は副業禁止が多いと思いますがこっそり稼げるアフィリエイト収入を得ている人もいるようです。今後は、今まで収入が少ないにも関わらず所得税の節税を目的として副業を事業としていた人たちにも国税庁からの確認があるかもしれません。

 最近はコロナによって電子申告が増えてきました。手軽に申告できる反面、添付書類が少ないため多少ごまかして申告することもできてしまいます。今後は、あやしい申告の人には確定申告後に調査が入るようになるでしょう。

 以前、筆者のところにも簡易調査の依頼がありました。iDeCoに加入しているか、医療費控除の根拠となる書類の提出など、電子申告によって手軽に確定申告ができるようなったため、虚偽申告が増えているのかもしれないと感じた出来事でした。

■どうすればよかったの?

 今回の医師の場合、所得税を減らす方法は2つありました。

(1)執筆ではなく本格的な事業を展開する

 例えば、医師としての知見を生かしてコンサルティング業務に従事したり、商品開発したりと自らリスクを負って事業を起こすのです。この場合、収入が雑所得に分類されることはないでしょう。判例で事業とは何かを明示していますから、営利性、反復継続性、企画性があることで、事業所得であると認めざる得ないことになります。

(2)不動産投資をする

 不動産投資の家賃収入は、不動産所得という分類となります。不動産所得は事業所得ほどではないですが、様々な必要経費を計上することができます。最も大きな特徴は、減価償却費という建物の経年劣化を経費にできること。支払いのない経費である減価償却費は、家賃を超える額であれば、不動産所得を赤字にさせる有効な経費になりえます。家賃収入であれば、雑所得に分類される恐れはなく、あくまでも不動産所得として確定申告することになります。

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