宇宙開発のボラティリティ

覇権争い激化 中国宇宙ステーション建設は着々、クルーの長期滞在も実現

鈴木喜生
鈴木喜生

2022年、実験モジュールを2機接続して完成

 今回ドッキングした有人宇宙船「神舟13号」は、来年の春にはアンドッキングして3名のクルーとともに帰還する。その後、おそらく4月ごろに無人補給機「天舟4号」が打ち上げられ、さらなる機材や燃料、クルーのための消費財などがステーションに届けられると、続けて有人の「神舟14号」がドッキングする。そして、そのクルーがステーションに滞在中の2022年5月には実験モジュール「問天」が、8月には同じく実験モジュール「夢天」が打ち上げられ、コア・モジュール「天問」の左右サイドにドッキングするのだ。この2機が接続した時点でこの中国宇宙ステーションは基本的に完成となる。

 中国では「長征シリーズ」(Long March Series)と呼ばれる一連のロケットが使用されているが、有人宇宙船「神舟」の打ち上げには「長征2号F2」(CZ-2F)、無人補給機「天舟」には「長征7号」(CZ-7)、巨大な各モジュールには中国過去最大のロケット「長征5号B」(CZ-5B)が使用されている。

 今年4月にコア・モジュール「天問」が打ち上げられた際には、巨大な長征5号Bの第一段が制御されず、地球上のどこに落ちるか分からない事態になった。これはペイロード(搭載物)であるモジュールが巨大なため、ロケットの第二段のすべてがモジュールとなっていて、つまり第二段はエンジンを搭載しておらず、その超重量物であるモジュールを第一段エンジンとブースターだけでローンチする仕様となっているのが原因だ。

 その結果、重いモジュールを軌道上に届けるためには第一段もほぼ軌道高度まで上がることになる。本来であれば最終的な軌道投入は第二段の推力に任せ、第一段は80km前後の低高度から海上に制御落下されるが、地球周回軌道に乗ってしまう第一段ロケットは、低軌道にわずかにある空気抵抗を受けながら、自然に落下するのを待つ必要があるのだ。

 おそらく、この第一段には落下を制御するためのシステムが搭載されていないと予想されるが、2022年度のモジュール打ち上げまでには、なにかしらの改善が行われるかもしれない。

さらに宇宙望遠鏡を遠隔制御するプランも

 3機のモジュールがドッキングすることで、この中国宇宙ステーションはいったん完成するが、そのオプション計画として2024年、宇宙望遠鏡「巡天」の打ち上げも予定されている。

 直径2メートルの主鏡と2.5ギガピクセルのカメラが搭載される巡天は、ハッブル宇宙望遠鏡の300倍の視野を持ち、10年間で全天の40%を撮影する予定だ。

 巡天は宇宙ステーションと同じ軌道に投入され、常時ランデブーフライトを行うことになる。こうした運用方法が採用されるのは、デリケートな天文観測の弊害になるステーションの反射光や振動を排除するためだ。そして巡天のメンテナンスを行う場合にのみ、宇宙ステーションとドッキングすることになる。

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