宇宙開発のボラティリティ

覇権争い激化 中国宇宙ステーション建設は着々、クルーの長期滞在も実現

鈴木喜生
鈴木喜生

史上はじめて5機の宇宙ステーションが併存する?

 中国が宇宙ステーションの建設を進める一方で、ロシアは今年8月、独自の宇宙ステーション「ROSS」を建設すると発表した。予定どおりにいけば最初のコア・モジュールは2025年に打ち上げられる予定だ。

 また、ISSは2030年ごろまでの運用が予定されているが、その最終段階においては民間企業であるアクシオム・スペース社が新たなモジュールをISSに複数接続し、ISS本体が投棄された以後も、それら複合モジュールだけで存続させるというプランが進行している。

 さらに、NASAは月周回軌道ステーション「ゲートウェイ」の建設を2024年11月までに開始することを目指しており、推進装置を搭載したPPEと居住キャビンであるHALOを、スペースX社のファルコンヘビーで打ち上げる予定だ。

 つまり、一時的ではあるが、地球周回軌道上に4機、月周回軌道上に1機、計5機の宇宙ステーションが併存する可能性があるのだ。10月19日現在、宇宙空間には10名の人間が滞在しているが、いまから10年後、その数は劇的に増えているかもしれない。

 ただし、ロシアのROSSやアクシオム・スペース社によるステーションの建設開始が遅延、または頓挫すれば、ISSが投棄された以後、地球周回軌道上には中国の宇宙ステーションだけが存在する、という事態にもなり得る。いずれにせよ、宇宙ステーションを巡る各国の宇宙覇権争いは、この10年間で大きくそのバランスシートを変え、決定づけられるに違いない。

出版社の編集長を経て、著者兼フリー編集者へ。宇宙、科学技術、第二次大戦機、マクロ経済学などのムックや書籍を手掛けつつ自らも執筆。自著に『宇宙プロジェクト開発史大全』『これからはじまる科学技術プロジェクト』『コロナショック後の株と世界経済の教科書』など。編集作品に『栄発動機取扱説明書 完全復刻版』『零戦五二型 レストアの真実と全記録』(すべてエイ出版社)など。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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