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「ほっ」とする故郷の雰囲気伝えたい 『県庁おもてなし課』直撃インタビュー(下)
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インタビューに答える映画『県庁おもてなし課』の三宅喜重監督=2013年4月16日(関西学院大学_難波功士ゼミ、有志学生記者撮影)
初監督作品の『阪急電車 片道15分の奇跡』に続き、『県庁おもてなし課』でもメガホンを握った三宅喜重監督に、作品に込めた思いや撮影時のエピソードなどを聞いた。
『阪急電車~』に続き、今回も特定の地域に深く根ざした作品だ。「地域に特化した作品を撮るとき、大事にしていることは何ですか?」と聞いてみた。
「地域感や雰囲気っていうのをできるだけ画面を通して伝えられたらな。そして、その地域感というのは、誰もが故郷に帰ったら感じる『ほっ、とする気持ち』だと思う」と、笑顔で答えてくれた。
三宅監督は大阪生まれ。新幹線の新大阪駅で降りると、心から「ほっ」とするのだという。そこにいると、「ほっ」とする。ふるさとが持つぬくもりが、自然と顔をほころばせるのかもしれない。
「高知県のお祭りみたいになればいい」。三宅監督は、本作を「ふるさとラブストーリー」と呼ぶ。映画の中では、高知県の雄大な自然が多く映し出されている。そこには、監督のこだわりがあった。
「高知県に行ったときに、空が広いなと思った。大きい、青い、広いが高知の印象。そんな画(え)をできるだけ撮りたいな、高知県が持つスケール感のある情景を撮らなあかんって思いました。時間がたつにつれ、季節感が変わっていくような映像を入れていくことも心掛けましたね」
そんな思いを象徴しているのが、エンドロールだ。Twitter(ツイッター)やホームページからの呼びかけで集まってくれた県民の笑顔と広大な自然を空撮も用いて描いた。
撮影期間中に台風に3度も見舞われるなど、大自然の洗礼も受けたが、スケール感あふれる映像から、スタッフのこだわりが伝わってくる。
この映画は、若手県庁職員の掛水が失敗を繰り返しながら成長していくストーリーだ。最後に、これから社会人になる学生も含めた若者に、この映画のどんなところを見てほしいと考えているのか聞いてみた。
「掛水は人との出会いの中で成長している。人と出会う事によってどんどん大きくなっている。色んな人の影響を受けながら成し遂げている。だから、これから社会人になる人は、人との出会いを大切にして頑張ってほしい」
新しい環境に踏み出すことは、新しい出合いや新しい人と人のつながりを生む。映画と三宅監督の言葉に込められたメッセージを大切にしたい。
私はどれだけ自分の地元のことを知っているだろうか。私はどれだけ友人をもてなすことができるだろうか。私はそれだけ自分を語ることができるだろうか。簡単なことのようにも思えるが、今の私には難題だ。この映画を見てそう思った。
映画には高知の魅力がこれでもかというほど詰まっている。今までは海外旅行にしか興味はなかったが、「高知に行かなきゃ!」と思った。私は有川浩(ありかわ・ひろ)さん原作の映画『阪急電車~』の舞台である兵庫県宝塚市に20年間住んでいるが、地元のことを真剣に考えたことなんて一度もなかった気がする。
映画が公開されたときに、毎日乗っている電車が「おしゃれなあずき色の阪急電車」と紹介されていることを初めて知り、驚いた。
『県庁おもてなし課』でも、掛水ら県庁職員たちが地元だからこそ気付かない高知の魅力を初めて知る。何の変哲もない日常が視点を変えることによって、他にはない強みだと知るのである。特別豪華な設備でおもてなしをするわけでもない。高知を旅する者に時には試練を与え、訪れた者にしか分からない感動でおもてなしをするのだ。
若者が地方を離れている。私の大学も地方からたくさんの学生が集まっている。地方出身の友人が「うちの地元、何もないよ」と言っていた。そのときは「へー、そんな田舎なんだ」と思った。けれど、私も誰かに「あなたの地元って何があるの?」と聞かれたら、「何もないよ」と答えると思う。
何もないわけがない。私が何も知らないだけなのだ。少し目線を変えて、地元の魅力を見つけたい。誇りを持って友人を地元でもてなしてみたい。自分の育った故郷を語れるようになりたい。だから明日はいつも付けているイヤホンを外して目をこらして歩いてみようと思う。
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