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【取材最前線】母になった安藤選手の決断

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【取材最前線】母になった安藤選手の決断

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 人事異動に伴う会社の歓送迎会が2次会に入り、宴席が盛り上がっていたころ、そのニュースは飛び込んできた。7月1日の夜。フィギュアスケートの元世界女王、安藤美姫(みき)が4月に女児を出産していたことを民放番組のインタビューで明かした。日本スケート連盟の強化スタッフですら知らなかったサプライズは、父親が誰かが明かされなかったことで、さらに衝撃は大きくなった。

 フィギュアスケートの担当になったのは2011年の秋。半年前の世界選手権で2度目の優勝を果たして以降、公式戦に出場していない安藤の真剣な演技はまだ目にしたことがない。ここ2シーズン、日本の女子は浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子の“3強”時代が続く。しかし、安藤を知る関係者からは「ソチ五輪シーズンに向けて、美姫ちゃんは調子を上げてくるはず」と常に聞かされてきた。そして、6月上旬に開催されたアイスショーに向けた会見で、五輪シーズンでの復帰を明言。芸術的と評される元世界女王はどんな演技でカムバックするのか、楽しみにしていた中での出産告白だった。

 強化選手から外れている安藤は現在、ソチ五輪最終選考会を兼ねる12月下旬の全日本選手権の出場権すらない。地区予選を突破するだけでなく、国際大会に出て五輪に必要な最低技術点の獲得も必要だ。「マスコミの皆さんは、どうすれば安藤選手がソチ五輪に出場できるかを取材しているが、先走りすぎるのは本人にとっても良くない。まずは元世界女王が2シーズンのブランクをどう埋めるのか、演技を見てみないと」。ある連盟関係者は報道が過熱する中で、冷静に話した。

 7月2日夜。私事だが、妻が第一子の長男を出産した。女性にとって、妊娠から出産までの時間がどれだけ大変かを間近で見てきた。

 アスリートとはいえ、出産から1年もたたずに迎えるソチ五輪と向き合うのは大変な決断だっただろう。それでも、3日に報道各社に流したコメントからは「愛娘との時間を大切にしながらスケートに専念し、ソチ五輪を目指して全力で挑戦していきたい」と意欲が伝わってきた。来年2月の五輪開幕時、果たして安藤は…。25歳の五輪シーズンに注目したい。

 (田中充/SANKEI EXPRESS

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