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「3型糖尿病」とアルツハイマー病 大和田潔

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「3型糖尿病」とアルツハイマー病 大和田潔

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 【青信号で今週も】

 文部科学省は、2008年度より脳科学研究戦略推進プログラム(通称、脳プロ)を開始しています。高齢化、多様化、複雑化が進む日本の社会において、『社会に貢献する脳科学』の実現を目指すことを目的としています。基礎研究や、新しい機器の開発など、いくつかの部門に分かれて研究が進められています。

 その中の「生涯健康脳」と呼ばれる部門では、健やかに人間の脳が胎内で形作られ成長し加齢していくことを研究しています。部門の中の「元気な老い班」は、メタボリックシンドロームとアルツハイマー病発症の関係をテーマとしています。高齢社会を迎える日本では重要なことです。

 高血圧、糖尿病などのメタボリックシンドロームは、動脈硬化を悪化させ、脳梗塞などを引き起こして脳機能を低下させる面が強調されていました。ところが、最近では、メタボリックシンドロームにおける脳のインスリンの働きが下がること、そのものが重要であると考えられるようになりました。

 メタボリックシンドロームでは、血糖値が高い状態が続いたり、肥満になって脂肪細胞から悪玉アディポサイトカインの分泌が続いたりします。そういった状態では、大量のインスリンが常に血液中を流れているときにはインスリンへの応答が鈍くなり、膵臓(すいぞう)が疲れ果ててインスリンを作れなくなるとインスリンが減少していきます。

 こういった脳内のインスリンの相対的不足状態そのものが、動脈硬化などを介さずに、直接アルツハイマー病の増悪因子となることが注目を集めています。米国の一般向け雑誌リーダーズ・ダイジェストに最近、この状態を「3型糖尿病」として紹介する記事が掲載されていました。脳内での「糖尿病状態」が脳をむしばんでいくということに、米国民の関心が集まっていることが示されています。

 オバマ大統領も脳科学分野を「21世紀の偉大なる挑戦」とよび、多額の予算を組んで研究を推し進めようとしています。まさに、本邦の脳プロが研究しているテーマと同じです。日本はガレキの中から頭脳を使って再興を果たしました。これから先進国は、脳科学の時代になっていくことでしょう。

 (秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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