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中東和平交渉再開 シャトル外交の裏事情

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中東和平交渉再開 シャトル外交の裏事情

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 【アメリカを読む】

 2010年秋から中断していたイスラエルとパレスチナ自治政府による中東和平交渉がワシントンで再開され、7月30日には双方があらゆる議題を対象にした本格的な交渉を始めることで合意した。ジョン・ケリー米国務長官(69)は2月の就任以降、6度も中東入りするシャトル外交を展開。パレスチナに経済支援を約束するなどして交渉の場に引き込み、成果を挙げた。中東情勢をめぐっては、シリアやエジプトなどでの混乱が続いているほか、パレスチナを国家として承認する動きも進んでいる。オバマ政権には、こうした動きによってイスラエルとパレスチナの関係がさらに複雑になるという懸念があり、早期の事態の打開を目指したい考えだ。

 半年で6度訪問

 「イスラエルとパレスチナは妥協点を見いだせないなどという言葉は信じないで欲しい。今、双方が取り組んでいることに目を向けてもらいたい」。ケリー氏は7月30日、国務省で開かれた会見で停滞が続いてきた中東和平交渉が動き出したことの意義を強調した。

 イスラエルのツィッピー・リブニ法相(55)とパレスチナ側の交渉責任者のサイーブ・アリカット氏(58)はこの日、あらゆる議題を対象にした本格的な交渉を2週間以内に始めることで合意した。リブニ氏は「交渉の目的は過去について議論することではなく、解決策を考え出し、未来に向けた決断をすることだ」と交渉進展に意欲を表明。一方のアリカット氏も「あらゆる議題がテーブルに乗り、例外なく解決されるであろうことを歓迎する」と期待感を示した。

 イスラエルとパレスチナをめぐっては、和平交渉の再開すらできないという悲観論が出ていた。パレスチナ側がイスラエルによるヨルダン川西岸地区へのユダヤ人入植活動の凍結を強く求める一方、イスラエルは活動の継続を主張するなど、双方の間に根深い対立が残っているからだ。しかしケリー氏は就任後の6カ月で6度も中東入りするシャトル外交を展開。バラク・オバマ大統領(52)も3月に中東入りし、エルサレムでの演説で双方に妥協を呼びかけるなどした。

 「久々の成果」実現

 その過程で米国は5月、欧州連合(EU)などとともにパレスチナに対する3年間で40億ドル(約4000億円)の経済支援策を打ち出した。また交渉再開直前の7月28日には、イスラエルから、拘束していた104人のパレスチナ人の釈放決定という妥協を引き出すことに成功。こうした米国の外交努力が「中東外交における久々の成果」を実現させたかたちだ。

 オバマ政権が中東和平への努力を加速させた背景には、クリントン前国務長官時代には目立った成果を上げられなかったという実態がある。

 オバマ政権は1期目の前半はアフガニスタンとイラクでの戦争の終結に注力。後半からは経済発展が進み、中国の存在感が拡大しているアジアを重視する路線に転じた。しかし中東では10年末にチュニジアから始まった「アラブの春」がエジプトやシリアにも波及し、各国の政情が不安定化。イスラエルとパレスチナの和平交渉も停滞し、12年11月にはイスラエルがガザ地区を空爆する事態に発展した。

 方向性は白紙のまま

 こうした事態を前に、米国には中東和平交渉の中断が長引けば、「和平に逆らう勢力が入ってくる」という懸念を抱いている。ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織ハマスの活動が活発化するなどして、和平交渉がさらに難しくなるというわけだ。

 またケリー氏のシャトル外交を後押しした要素のひとつには、国際社会に国家としての承認を求めるパレスチナの動きもある。パレスチナは昨年11月の国連総会で、従来の「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げされた。米国やイスラエルは「現状変更は和平交渉の妨げになる」と反発。今後も他の国際機関で同様の動きが進めば、「イスラエルとパレスチナの間の摩擦が強まる」(米政府高官)とみていた。

 ただ、双方は交渉再開には合意したが、個別の議題の方向性については白紙のまま。双方の内部には交渉再開自体に反対する勢力も依然として多く残っており、今後の協議の難航は確実だ。ケリー氏は7月30日の会見で「妥協とは何かを諦めることではない。全ての関係者が平和から利益を得るということだ」と述べて歩み寄りを求めたが、双方の指導者がどこまで妥協に踏み出せるかどうかは、まだまだ不透明だ。(ワシントン支局 小雲規生/SANKEI EXPRESS

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