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科学
食卓に並ぶ?「試験管牛肉」 高コスト「物足りない」味
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牛の筋肉組織の幹細胞を培養した人工牛肉で作った世界初の「試験管牛肉」ハンバーグが8月5日、ロンドンでの記者会見でお披露目され、調理・試食が行われた。将来の食糧増産や温暖化対策が地球規模の課題となるなか、研究開発にあたっている科学者らは「安全な肉の代用品で、増大し続ける肉の需要に対応する技術になりうる。温暖化対策としても有効だ」と意義を強調した。ただ、コスト高のうえ、2人の試食者からは味にもやや難ありといった感想が漏れており、商用化にはまだかなりの時間がかかりそうだ。
「家畜の飼育は環境に良くないうえ、全世界の需要量を満たしておらず、動物にとっても良くない」
オランダのマーストリヒト大学のマーク・ポスト教授は、人工牛肉の研究開発を始めた理由をこう説明した。
米CNNテレビなどによると、ポスト教授らのグループは2008年に研究開発を開始。幹細胞を栄養液に入れ、約3カ月で2万本の筋状肉に成長した段階で142グラムの挽肉状の人工牛肉に合成した。元は白色だったので赤色の根菜ビーツ(火炎菜)の汁とサフランで赤く色付けし、パン粉や卵を混ぜて本物のハンバーグ肉のように加工した。
製造開発費は約22万ポンド(約3300万円)。AP通信によると、資金は米グーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリン氏(39)が提供した。ブリン氏は「(人工牛肉は今後)飛躍的な進化を遂げると楽観している」とビデオメッセージを寄せた。
お披露目を兼ねた記者会見には約200人の報道陣が詰めかけた。まずフライパンにひまわり油とバターをひき、この人工牛肉を焼いた後、バンズと野菜を添えた試食セットをボランティアの2人が試食した。
1人目の試食者、オーストリア人の食文化研究家ハンニ・ルツレル氏は「本物の肉に近いがあまりジューシーではなく、塩こしょうが足りない」と評価。2人目の米料理記者、ジョシュ・ショーンウォルド氏は「脂肪分がなく“動物タンパク質ケーキ”のようだと表現。「ケチャップやハラペーニョ、ベーコンなどと一緒に試してみたい」と語るなど、食感は本物に近いが物足りないとの感想で一致した。
ポスト氏も味の評価については慎重で「非常に良いスタート」との表現にとどめた。
世界保健機関(WHO)によると、1997年~99年に年間2億1800万トンだった食肉生産は、2030年までに3億7600万トンに増えるが、需要はそれを上回る。
さらに、英オックスフォード大学の食料政策研究ネットワークの責任者、タラ・ガーネット氏によると、既に「全世界の14億人が標準体重を超えているか肥満である一方、飢えた人々も10億人いる」といい、食肉を含む将来の食糧不足は確実。人工牛肉のニーズは極めて高い。
また、人工牛肉の製造は、一般的な畜産牛の飼育に比べ、エネルギー使用量で45%、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの発生量で96%、必要な用地で99%、それぞれ少なく、環境にもやさしい。
人工牛肉が画期的な未来の食材として食卓に並ぶ日は来るのか。ポスト教授らは、製造コストを下げられれば今後10~20年で商用化できると見ており、「今後、分厚いステーキ肉の培養を成功させたい」と意気込んでいる。(SANKEI EXPRESS)