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経済
辣腕の女性CEOで息を吹き返すヤフー
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優美な外見と裏腹に、前のめりで、攻める経営者という印象をまた強くした。IT界のみならず、米企業の女性経営者で最も注目を浴びる一人だろう。
「ビジネスは堅調だ。まだやるべきことは多いが、サービスの強化も快調なテンポで進んでいる」。ヤフーの4~6月期決算発表で、減収にもかかわらず最高経営責任者(CEO)のマリッサ・メイヤー氏(38)からは強気の言葉が並んだ。
だが、その強気もあながちはったりとは聞こえない。どうやらヤフーが断崖絶壁で踏みとどまったことは、業界関係者も市場も認めざるを得まい。
一時は身売りもささやかれた米ヤフーの経営が持ち直している。牽引(けんいん)車は昨年7月に米グーグルから引き抜いたメイヤーCEOで、社内の混乱を収拾し、意識改革を推進。新興企業を次々買収するなど反転攻勢に出て、株価も急上昇している。ただ、生命線の広告事業は伸び悩み、“完全復活”へはなお道半ばだ。
メイヤー氏就任前のヤフーは文字通り混乱の極みにあった。グーグルとの競争で業績が低迷し、米電子決済大手ペイパル社長だったスコット・トンプソン氏(55)をCEOに招いたが、内紛でヤフー創業者のジェリー・ヤン氏(44)ら役員が大量離反する事態に発展。挙げ句の果てはトンプソン氏までが学歴詐称問題でヤフーを去った。
株価は急落し、顧客も離れていく中、マイクロソフトやグーグルなど競合他社がヤフーの買収に動き出したと伝えられた。財務改善のために保有株など資産の切り売りも検討したが、これまた行き詰まってしまう。進退窮まったヤフーだが、ライバルのグーグルの副社長だったメイヤー氏に再建を託す離れ業を繰り出した。
妊娠していたメイヤー氏は就任早々、産休のために休業。高給で迎えられたこともあって、彼女に批判が集中した。だが、すぐに社業に復帰したメイヤー氏は批判もものかは、精力的な仕事ぶりで雑音を封じ込む。
萎縮する社内をよそに、メイヤー氏は成長性の高いベンチャーを吸収する拡大戦略に打って出た。3月には、ネット上のニュース記事をスマートフォン(高機能携帯電話)でも読みやすくするアプリ(応用ソフト)を手がけるサムリー社を買収すると発表。サムリーの経営者は「神童」と呼ばれた高校生のニック・ダロイシオ君(17)で、オノ・ヨーコさん(80)ら著名人も支援していたこともあり、IT業界でも話題を呼んだ。ヤフーのエンジニアとして働く予定のダロイシオ君は、ヤフー再建に挑むメイヤー氏にとっても頼もしい存在になりそうだ。
今月(8月)2日には、ネット閲覧ソフトを手がけるロックメルト社の買収を発表したが、就任以来買収した企業はなんと21社を数える。トップページのデザインも刷新し9月には新しい企業ロゴも発表予定で、“新生ヤフー”を印象づける狙いだ。
メイヤー氏は社員のやる気を引き出す待遇改善にも着手。最新のスマートフォンを支給し、古巣のグーグルに習い食堂を無料化した。「オフィスで語らう中で、すばらしいアイデアが生まれる」と、あえて在宅勤務も禁じた。効果は離職率の低下に表れ、米紙ニューヨーク・タイムズは「悲観的な社員が減った」と指摘する。株価も切り返し、メイヤー氏就任前と比べて、なんと約7割も上昇した。
だが、直近の4~6月期は減収で、業績自体はまだ復調に遠い。売上高の8割は広告収入だが、調査会社によると、昨年の世界のネット広告市場は前年より2割拡大したのに、ヤフーは3%増にとどまった。
米誌ニューズウィークは「業績はぱっとしないが、企業イメージを回復し、社内のムードを変えたメイヤー氏の手腕は評価すべきだ」と指摘する。
「優れた人材が増えれば魅力的な製品開発と収益につながる。もう少し時間がほしい」と投資家らに訴えるメイヤー氏。一時の苦境から脱したヤフーだが、ライバルとの競争力を取り戻し、熾烈(しれつ)なIT業界のサバイバルを生き抜く闘いにおいて、ある意味、これからが正念場といえそうだ。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS)