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【取材最前線】禁煙出来ない厚労省
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受動喫煙防止の旗振り役の厚生労働省では、東京・霞が関の庁舎2階のオープンデッキで喫煙ができる異常事態が続いている。厚労省の健康局が官公庁施設の全面禁煙を求める通達を出していながら、福利厚生室は喫煙スペース維持に固執。自己矛盾に終止符を打てないままでいるのだ。
厚労省は2010年2月、健康局長名で受動喫煙防止対策の徹底を地方自治体に通達。具体的には「公共空間は原則、全面禁煙であるべきだ」と指示した。中でも中央省庁や自治体庁舎について「少なくとも全面禁煙が望ましい」とした。さらに12年10月の通達でも対策の徹底を求め念を押している。
ところが、厚労省庁舎では12年5月、小宮山洋子厚労相(当時)の指示で2カ所にあった屋外の喫煙スペースのうち1階エントランス付近のスペースが閉鎖されたが、オープンデッキのスペースは残され、全面禁煙は先送りに。今年5月31日の「世界禁煙デー」でも、地下1階のたばこの自動販売機が撤去されただけだった。
さすがに放置できないと感じたのか金子順一前事務次官が全面禁煙に向け、喫煙による健康被害防止政策を推進する立場の健康局と、職員の声に配慮して喫煙スペースを維持したい福利厚生室に協議を進めるよう指示した。
6月12~19日には平日の数時間、オープンデッキの喫煙スペースが一時的に閉鎖された。この期間中に行われた職員の健康診断で検診車にまで煙が漂う可能性があったためで、福利厚生室も「喫煙の放置はモラル上、問題がある」として閉鎖に踏み切った。嫌煙派職員からは「ヤニ臭くない職場の実現に向け、ようやく一歩踏み出した」と歓迎する声が上がった。
それでも、福利厚生室は愛煙派への配慮も忘れない。「全面禁煙の時期はまだ決めていない」と、曖昧な態度に終始しているのだ。だから、模範を示すべき厚労省幹部が臆面もなく紫煙をくゆらせる。
さらに「喫煙のリズムが崩れると、仕事に支障が出る」と全面禁煙に嫌悪感を抱く職員も一向に減らない。それなら、公共空間の全面禁煙方針を明記した通達を取り消せば矛盾もなくなるのだが、意地があるのか3年半も知らんぷりをしている。(比護義則/SANKEI EXPRESS)